第3章 修学旅行
その日の夜。ホテルの部屋は2人部屋。お風呂を出て体操服に着替えた柚に、友人のマナが話しかける。
「今日、蜂楽くんと一緒に回ってたんだって?付き合ってんの?」
持っていた化粧水のボトルを落っことしそうになった。
「ないない!一緒に居ただけ!」
「えー?私さ、彼氏の所行ってくるから、先生が来たらごまかしといてくれる?付き合ってるの黙っててあげるから」
「だから付き合ってないって」
あー、びっくりした。そりゃ見ている人がいるかもだよね。
窓を開けていたバルコニー側から、ドンドンと音がする。どうやら真上の部屋の生徒が騒いでいるらしい。数分置いて先生らしき怒鳴り声。
「チャンス!」とマナは部屋を飛び出していった。青春だなぁ。
上の部屋も静かになって、スマホがぽこんと鳴る。蜂楽からだ。昼間送ったのサッカーの動画見た?だって。
消灯までまだ時間があるから、これから見るよと返信する。
直後、バルコニーからがたんと音がした。振り返ると「うわ、やべぇ」と今日一日聞き慣れた声。
暗闇の中、網戸越しにハニーレモン色の瞳と目が合った。