第3章 修学旅行
修学旅行当日。日程は京都・大阪・奈良を巡る3泊4日。
2日目の京都は班別の自由行動だが、前々から柚は同じ班の子に単独行動したいと頼んでいた。和菓子屋ばかりを回っていたら気を遣わせてしまうし、1人の方がゆっくり回れるから。
気になる和菓子屋はピックアップしてきたし、兄におすすめも教えてもらった。
行きたいお店が多すぎてお小遣いが足りるかも気になる。
(まずはここの路地裏に入って…)
踵を返したところで背後からパタパタ足音が聞こえた。
「委員長、待ってよ。置いていくの、ひどいじゃん。一緒に回ろ♪」
「蜂楽くん、班の人は?友達と回った方が楽しいよ?」
「友達なんかいないもーん」
確かに特定の誰かと親しく話しているところは見ない気がする。でもこんなに人懐っこいのに。
「委員長と一緒にいた方が美味しいもの食べれるっしょ。行こ行こ!どっち?」
上機嫌な蜂楽と一抹の不安を感じながら歩く。途中で飽きちゃったりしないかな。
お目当ての和菓子屋は路地裏を少し入った所にあった。紅葉の形の練り切りとお抹茶を2人分注文する。
「うわっ、苦ぁ…」
抹茶を一口含むと蜂楽はべーっと舌を出した。
「お子様舌だねぇ」
柚は笑う。いちいち仕草が子どもみたい。
その後も写真を撮りながら何件か和菓子屋を巡った。蜂楽に行きたい所を一応聞いたが、どこもないよの一点張り。
(いいのかなぁ…)
私は楽しいけど。彼はどう思っているんだろう。