She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第17章 いっしょのよる
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夕食を終え、片付けを手伝おうとした真珠は、恵里奈に構ったって、と言う侑士に従い、リビングにいた。
「こっちは...あ、福岡だ」
福岡の天満さん、と恵里奈が指差したアルバムの写真。
「こうやって見ると、恵里奈とゆう、似てるね」
お宮の参道と見られる椅子で、白い餅菓子を食べている幼い2人。
「あっ、これゆうちゃんが初めてテニスラケット握った時」
「かーわーいっ!」
白のポロシャツにハーフパンツで、両手でやっとのことでラケットを構えている侑士。
「テニスはもともと、おじいちゃんに教えてもらってんだよね」
「おじいさまに?」
「ママの方のね」
確か、とアルバムを捲った恵里奈が真珠に見せる。
「小学校の時かな?亡くなっちゃったんだけど」
見せてもらった写真は、まだ眼鏡をかけず、屈託無く笑う侑士が、数十年後の侑士の姿と言える男性に肩車されている写真。
「おじいさま、そっくり!」
ええっ!?と写真と侑士を見比べる真珠。
「眼鏡まで生き写し!」
そう言うと、2人は少し驚いた顔をした。
「ゆうちゃん、話したの?」
「話してへん」
そう言って、侑士はキッチンで背を向けた。
「ゆうちゃんの眼鏡、伊達って知ってるっけ?」
うん、と頷く真珠。
「あれ、この眼鏡なんよ」
「おじいさまのってこと?」
そう、と恵里奈。
「ゆうちゃんがテニスしだしたの、おじいちゃんの影響でさ。
おじいちゃん死んじゃって、しばらくテニスできなくて」
「そんな話、せんでええて」
背を向けたまま言う侑士。
「おばあちゃんが、『ゆうちゃん、テニスやめちゃうの?ばぁば、ゆうちゃんがテニスしとる姿、また見たいで』って言われて辞めるのやめて。
おばあちゃん、それがすっごいうれしかったみたいで、一周忌の時にあの眼鏡、ゆうちゃんにくれたの。
お守りや、って」
恵里奈の話に、侑士は背を向けたまま、外した眼鏡を肩のあたりで振った。
そうだったんだ、と照れているように見える背中に微笑む。
「やから、どんだけ試合で壊そうがあれ、使こてるの」
お守りやから、と言った恵里奈。
「大事な物なんだね」
「あんま似合てへんのはそういう理由」
「え?似合ってない?」
そうかな?と真珠は首を傾げ、こちらを向いて食洗機の食器を片付けている侑士の横顔を見つめた。
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