She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第17章 いっしょのよる
ただいまー、という声に返ってきたのは、親友かつ弟の恋人の、おかえりー、という声。
リビングに入ると、2人でキッチンに立っていた。
「おかえり」
手にした包丁を目線の位置に上げたまま、こちらを見る侑士。
「いや、怖い。
なに?私、捌かれるん?」
「減らしたい箇所あるなら削ったるよ?」
「ぅおいっ!
遠回しに太った、言っとるやんっ!?」
失礼だなっ!と返した恵里奈に、真珠がくすくすと笑っている。
「言うて無いよ、被害妄想やわぁ
ただ、もうちょい見れる脚、した方がええかなぁ、と」
「よっしゃ!夕飯、あたしが作ったる!
きずし作るわっサゴシと一緒に酢、浸かりや」
「自分の甘すぎるから嫌やわ。
夕飯ならもうできる」
ほぼほぼ漫才の姉弟のやりとりに、真珠が大笑いする。
「仲いいねぇ、二人は」
「やろー?うちん弟、かわええやろー?」
キッチンに来て、侑士の腕を掴んだ恵里奈。
「くっつきなや、うざったい」
心底嫌そうな顔の侑士から作業台に目を移した恵里奈。
「グラタンっ」
「ぶーっ!ラザニアや」
「変わらへんやん」
「別もんや」
ホワイトソースとチーズが入るグラタン皿を手にすると、ほらどきや、と姉を離してオーブンに入れる。
温度と時間を設定し、あとは待つだけや、と言った侑士。
「いいですねぇ。
彼女の好物作れる彼氏」
ニヤニヤしている恵里奈。
「ゆう、すごいよね」
ね、と見上げる真珠に、別になんもすごないよ、と片付けを始めた侑士。
「こちら、割とおすすめでしてぇ」
「ほうほう」
まるで化粧品の販売員のような恵里奈の口ぶりに、真珠はノッてやった。
「今、まだ市場価値的にはそこそこ言うところなんですけど」
「おいっ!誰が『そこそこ』やねん!」
そっちも失礼や!と笑いながら調理器具を洗う侑士。
「10、いやっ3年待ってもらえたら真価、わかってもらえる代物なんですぅ」
「なんや、その数字の根拠?」
なんの真価や?と、貸して、と腕捲りした手を差し出してくれた真珠に洗ったものを渡す。
「今ならお試し無料!ぜひっ!」
「誰が『お試し無料!』やっ!
もう付き合うてんねん!」
「誰のおかげー?ねぇ」
ねえ?ねえ?と恵里奈は、洗い物に集中しだした侑士の脇腹を突っつき続けた。
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