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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第16章 穏やかな時



「夏休み無いで」
侑士は、喫茶店でクリームソーダのアイスを掬った。

「2学期制?」
「せや。
 正確に言えばあるんやけど、『夏休み』言わへん。
 7月後半から盆明けあたりまでの4週間の休みを『前期休業期間』、10月と年末年始にある1週間の休みを『中期休業期間』、『後期休業期間』言うて、進級ん準備入る3月末から4月までの2週間ちょいの休みを『進級準備期間』言うねん」
「実質、4回長期休みがあるんだ」
「6月に関テニあって、総体、新人戦、新人テニス続くさかい、前期休業期間は授業無い分試合、試合、試合やね」
「身体、持ちますか?無理されませんよう」

大変すぎる、と深刻そうにする真珠。

「本当に、無理しないでね?
 疲れてる時は休んでね?
 できるだけ、ゆうが無理をしないようにしようとは思うけど、本当にそこは体調優先で」

心配そうに言う真珠に、侑士は笑って言った。

「ほんなら『来て』言うたらすぐ来てくれるん?」
「その時はもちろん!」
「俺、愛されてるやん」
「そっそんなの、当然です」

にこり、と笑って、食う?とパフェスプーンに掬ったバニラアイス差し出す。
いただきまーす、と食いつき、冷たい、と美味しそうに笑う顔に微笑む。


「夏休み言うたら、名古屋おった時、オカンがモーニングに連れてってくれてん」
「あら、おしゃん」
「喫茶店やったんやけど、パン、サンドイッチ、ワッフル、おにぎり。ゆで卵、サラダ、焼きベーコン...あとフルーツとヨーグルト。
 朝食の定番全部並べた!みたいなビュッフェ式で。
 『朝からめっちゃ豪華や!』てはしゃいで、取りすぎて食い切れよぅなって、オカンと姉ちゃんに呆れられてん」

アホやろ?と笑う侑士に、かわいい、と笑い掛ける。

「そん時のこと思い出して、以来、ちょい取るん控えてしまうんや」
ほんで昼前に足らんようなって後悔する、と苦笑いする。

「トラウマになっちゃってる?」
「学食でも金曜がビュッフェなんやけど、あれ、自分の一人前がわからんようにならん?」
「いつも食べてる量と同じくらい取ったらいいだけじゃん。
 お昼、学食?」
「せやね。
 試合ん時は、オカンに弁当、作てもらうで」
「なに?遠回しにおねだり?」
「そないな風に聞こえた?」

笑う侑士に、期待せずにどうぞ、とデザートフォークで掬ったカッサータを差し出した。

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