She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第16章 穏やかな時
「おっきいわんちゃん、可愛かったなぁ」
ふわっふわだったね、と笑う真珠と公園内を歩く。
「ここあちゃんとれいとくん、ママさんに怒られてないといいけど」
リード持ちたくなるよねぇ、と子どもたちの気持ちを代弁してやる真珠。
何か考え込んでいた侑士が、そういうことか、と言った。
「なにが?」
「あん子らの名前、なんや引っかかっとってん」
名前、と思い出す。
「『チョコ』と、『ここあ』ちゃんと『れいと』くんだっけ?」
「みんなカカオやん」
カカオ...と呟いて、あ!と気付いた真珠。
「『ココア』『チョコ』『レート』!」
やろ?と言われて、だねぇ、と頷く。
「狙って名前つけたんやか?」
「かもねぇ」
おもしろい名付け、と真珠が笑った。
「そういや、マコトの名前の由来ってなんやん?」
真珠と書いてマコト、と聞く侑士。
「父が音を決めたの。
『嘘偽り無く、素直であるように』って」
なぞった性格である気がする、と思う。
「私、6月が誕生日で、誕生石が真珠」
「ああ、それで」
「『まこと』って読める!って運命感じたそうな」
「なるほど。ええ名前、つけてもろうたね」
でしょ?と笑った真珠。
「『侑』って人をたすける、思いやるって意味でしょ?
そして『士(もののふ)』のように強く。
『侑』はゆう自身の性格、『士』はテニスに対する姿勢そのままな気がする」
いい名前、と微笑む真珠。
「誕生日いつや?」
「6月24日」
覚えとかな、と6、2、4と呟く。
「ゆうは、10月15日ね」
「俺、言うたっけ?」
記憶にない、と考える侑士。
「この前、舞台見に行った時に出してた学生証に書いてあった」
それは、チケットの身分証明用に出したもの。
「よぉ見とったね」
「割と、目敏いんですのよ?」
ふふん、と得意げな顔。
「いい季節に生まれたね」
「そぉか?」
「お天気は穏やかだし、紅葉がきれいでしょ?
秋らしくなって美味しいものが増えて、ハロウィンで盛り上がる。
学校の大きなイベントが多くて思い出増えるし、空気が澄んでお月見ができる!」
ね?と微笑む真珠。
「そう言えば、閏年の2月29日生まれって閏年じゃない時は、誕生日、いつ祝うんだろう?」
「どうなんやろね?」
ランナーや子ども連れが目立ち始めた公園で、ねえ?と不思議そうにする真珠を見つめた。
✜
