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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第2章 それが始まり


その後、特に会話もなく、そろそろ帰るね、と真珠が席を立った。
「侑士君、映画、一緒に見てくれてありがとう」
「こっちのセリフやで」
微笑んだ真珠は、隣でそっぽを向く恵里奈に向いた。

「さっき、むきになってごめん」
ちら、と真珠を見上げ、黙り込む恵里奈。

「マコっちゃんが嫌がること言うた恵里奈が悪いんやろ」
「っ、そんなつもりじゃ」
親友と弟に責められ、うう、と恵里奈は唇を噛む。


「恵里奈」
座り直した真珠に、なに?と顔を上げた。

「ありがとう。
 でも、私のことだから、私がなんとかしなきゃ」
ね、と笑った真珠。

(喧嘩でもしとったんか...)

侑士は、姉と真珠が気まずくなることでもあったのか、と二人を見る。

「それじゃ」
「気ぃつけや」
「ありがとう」
またね、と手を振る真珠に手を振り返す。

立ち上がる様子のない姉に、どないしたもんか、と黙っていると、コツ、とヒールの先でスニーカーを突かれた。
んっ、と目線でなにかを指す。

「なんやねん、はっきり言いな」
「このアホ」
「アホ言うやつがアホや」
「バカちん」
「なんやねんなっ!?」
えらい突っかかってくるやん、と不機嫌そうな姉から距離をとる。

ゆうちゃんさぁ、と言われ、なんや、と返事はする。

「彼女出来た?」
「っなんやねん、藪から棒に」

どうなん?と聞かれ、なんとなく咳払い。

「めっちゃ手紙、もろてくるやん」
通学路や学校で、女の子からもらうそれを知っていたらしい。
「な、なんで知ってん」
「この前、ママが見せてくれたで」
「おかんっ!?」
なにしてくれてんねんっ!?と知りたくなかった出来事に慌てる。

「普通、女の子からの手紙、部屋のゴミ箱に捨てる?」
う、ぐっ、と黙る。

「しかも、2枚も3枚もそのままポイッて...
 我が弟ながら、残忍な男やねぇ」
「ど、どないせぇ言うんよ...」
「返事書かんの?
 いいな、って思う子、おらんの?」

いいな、と思う、と考える。
またね、と手を振った真珠の姿が浮かぶ。

「書くかいな。
 それに、そんな子ぉ、おらんよ」
「...あっそ」

ブレザーのポケットに突っ込んだ手になにかあたる。

出てきたのは、さっきの映画の半券。

しばらくそれを眺め、再びポケットにしまい込んだ侑士。

「明日、マコに謝らんとなぁ」

恵里奈は小さな溜息をついた。
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