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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第2章 それが始まり



 ✜

「恵里奈、遅くない?」
真珠との話に夢中になっていて、姉を待っていたことをすっかり忘れていた侑士。

「どないしたんやろ?」
自宅からなら、とうに着いていてもおかしくない時間だ。

連絡とるか、と携帯を取り出した侑士は、ん?と声を上げる。

-終わったら教えて-

たったそれだけ、姉からメッセージが来ていた。

「どういうこと?」

画面を見せた真珠も首を傾げ、さあ?と侑士も首を傾げる。

「あ、もしかして、恵里奈、さっき連絡した時、あれから映画見るって思ったんじゃ...」
上映が終わったら教えてって意味かも、と言う真珠。

そういう事か、と映画1本見るには掛かりすぎた時間の経過に、まずったな、と侑士は姉に電話を掛けた。

-終わったー?-
「うおっ!びっくりしたっ」
ワンコールもなく出た姉。
「ごめんごめん。
 マコっちゃんと話しとったら、えらい時間経ってしもうて」
-あ、だろうねぇ-

怒ってはいないようで、向かいで不安そうにしている真珠に、大丈夫、と頷いてみせる。

「えっと、今、本屋のとこおって...」
-あ、知ってる、知ってる-
どういうことや、と聞き返そうとすると、あ、と真珠が何かに気付いて声を上げた。

-マコに気づかれたかも-
「なに、言うてん?」
繋がらない姉との会話。

「侑士君、侑士君」
向かいの真珠が、侑士と向かい合わせに座る間のテーブルを指先で叩く。
「あそこ」
ほら、と向けられた手の方に顔を向ける。
眼鏡越しに、ス、と目を細める。

-あ、ターゲットにバレた模様-
「なにをやってるんや」

カフェスペースの隣の書棚からこちらを覗き見ている姉を見つけ、呆れた声を出す。

こちらに来た姉は、侑士の隣の席に座った。
「なぁんか盛り上がってらっしゃったので、声掛けづらくて」
「ごめんね」
びっくりしたよ、と笑う真珠。

「でも、わかったでしょ?」
恵里奈は真珠にそう言った。
ん?と首を傾げた真珠。
「年下も、ありなんじゃない?」
「なんやん?」
ちら、と目線を向けられた侑士は、話が見えへん、と言う。

「恵里奈っ」
怒った顔の真珠。

「まあまあ、まあまあ」
「それ以上言ったら、友達辞めるから」
「...冗談よ」
「笑えない」
「ごめん」

女の話に男が割り込むのは野暮だ、と侑士は、静かに二人を見ているだけだった。

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