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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第3章 ファーストチャンス



恵里奈と2人で出歩くのは久しいなぁ、と帰り道で、恵里奈は喋り続けている。
聞けば、真珠は恵里奈とは中高違うが、通っていた塾が同じだったらしい。

「あとは?」
「え、なんや、急に」

ペラペラと喋っていた姉に聞き返す。

「あ、あと、京都におじいちゃんたちがおる」
「そうなんや」

ほんまに仲いいんやな、と聞き流しながら浮かぶ笑顔。

それから、映画に涙を流していた横顔。
恥ずかしそうに見上げてきたまんまるの目。

「ほんまに年上かいな」
「マコ、かわええよね」
せやね、と言いかけ、ん?と留まる。

「思わん?」
「...知らんわ」

ふいっ、と目を逸らした侑士の顔を見ようとする恵里奈。

「やめぇやっ!うざったいねんっ」
「耳、赤い」
パッ、と髪で隠そうとした侑士に、あははっ!と笑う。

「ゆうちゃんの初恋やね」
「っ初恋ちゃうわっ」
「じゃあ、セカンド・ラブや」
「うるさいねんっ別に好きと違うっ」
「そっか。まぁ、男おるし」
「え、」

しゅん、と黙ってしまった侑士に、恵里奈は隠れ笑う。

「家族ぐるみで仲いいお父さんの同僚はんとか」
「っ」
「え?なに?
 お父はんの仕事の関係で、男の知り合いが多いらしいで。
 酒蔵の蔵人さんしとるんよ」

ニヤニヤしている恵里奈に、このっ!と拳を握る。

「閉ざせてへんね、心が」
「しゃあしぃわ!」

おもちゃにされとる!と恵里奈を置いてズカズカ歩き出す。

「おーい。置いてくなぁ」
「置いてくわっ」
「あ、マコから電話」

一瞬、侑士の脚が止まりかけた。

少し後ろ、下の方からの視線に溜息。

「姑息っちゅうかアホらしいっちゅうか」

そないなことに反応するかいな、と呆れ声で姉を振り返ると、携帯にメッセージ。

「...なんやねん、これ」
「マコのアドレス。
 私も明日、謝るけど、ゆうちゃんも謝っとってや」
「っなして俺が謝るねんなっ!?」
「その方が気まずくないやーん」

知らへんがなっ!と消しかけたメッセージ。

お願いー、と縋ってくる姉。

なんで、と思いつつ、まあ身内として助けてやるべきか、とアドレスを登録した。

 ✜

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