• テキストサイズ

She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第15章 さよなら、初恋


仲睦まじそうな二人を遠くから眺める。

「返事、あったか?」
後方から聞こえた声に、肩が跳ねた。
「ねぇな。家、寄ってみるか?」

どうする?と歩いてきた三人。
彼と同学年のテニス部レギュラーの面々に、こそこそとその場を離れる。

「もっかい掛けてみるか」
携帯を耳に当てた宍戸が、ふと外に向けた視線で、あ、と言った。
「いたし」
え?と宍戸の陰から目線の先を見ている向日。
「やっぱ、サボりじゃん」
侑士、と手を挙げたが、あれ?と目線をずらす。

「マコトちゃん?」
あそこ、とベンチを指す。

「学校も部活もサボって、おデートだったんだね」
いひひ、と笑う向日に、意外だ、と宍戸は溢す。

「部活サボった罰だ。
 マコトの前で打ち負かしてやる」
「うわっ!跡部、性格悪ぃ」
「えー、ちょうど四人だし、ダブルスしようぜ?」
「それ、必然的に俺が跡部と組むことにならないか?」
「あーん?何が不満だ?宍戸?」

連れ立ってテニスコートに向かう面々。

ただのクラスメイト。

偶然、隣の席になっただけ。

テニスの経験はない。

彼が、自分の下の名前を知ってくれているかも怪しい。

初めて話したのは、図書室だった。

 ✽

(何、読もうかな)

図書室の文学が並ぶ棚で、何か面白そうな本がないかと探していた。

惹かれるタイトルが無く、しゃがみ込んで、最下段まで見てみる。

「おっわ!」
「へ?」

低い声とともに影に包まれ、何事かとしゃがんだまま見上げる。

「すまん。
 人、居るん気付かんかってん」

踏んでへん?と棚に手をかけて見下ろす瞳。

(ん?)

絶賛片想い中の彼とダブる面構えは、ビビったわぁ、と丸くした目で、堪忍え、と言って離れる。

この声、と見ていた彼の制服の胸ポケットに掛けられていた眼鏡。

「おっ忍足君?」
「え?」

ん?とこちらを見た姿は確かにテニス部の彼。

(眼鏡かけてないの、初めて見たっ)

しばらくきょとん、としていた彼は、あ!と言って顔を背けた。

「ちょ、見んとって」

忘れてや、と掛け直された眼鏡。

「え?なんで?」
「裸眼見られるん、恥ずいねん」

眼鏡を掛け、忘れてや、と柔らかく笑った彼が、少し耳を赤くしていて、一瞬だけ見た、驚いた素顔がいつまでも忘れられなかった。

 ✜

/ 311ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp