She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第15章 さよなら、初恋
✜
「おっしー、彼女できたらしいよ」
向かいの友人の言葉に、え、と固まる。
「え?」
「むかひーが言ってた。
『侑士に彼女できたしー』って」
いつまでもウジウジてるから、と自分の恋心を知る友人が淡々と告げた言葉に、ショックを受ける。
「ほ、ほんとに?」
「私に聞かないでよ。
確かめたいなら、むかひーに聞きな」
それか本人に、と言われ、そんな、と俯く。
「さっさと告っちゃわないから」
あーあ、と言う友人。
「だって、忍足君、誰かと付き合うとか、そういうの、しないと、思ってた、から」
「あー、そう言えばそうやって断ってきたんだっけ?
気が変わったんじゃない?
所詮、高校デビュー?」
あまり彼らしくない友人の言葉。
「誰と、付き合ってんだろう」
「だから、本人に聞いてみたら?
むかひーが言っただけで、真偽不明だし」
明らかに彼女できましたっ!て感じ無いしね、と主のいない彼の席を見やる友人。
「まあ、あのおっしーが『彼女できたー』って浮かれてたらそれはそれでちょっとキモいけど」
何考えてるかわっかんない奴だよねー、と言う言葉に、何も返せなかった。
(忍足くんに、彼女...)
予鈴とともに向日と教室に入ってきた侑士。
席について、いつも通り本を読むのかと思ったら、眺めるのは携帯。
(あ、)
それを見て、柔く微笑んだ瞳。
画面に映るものだけではない何かを見て、穏やかな表情をしているように見えた彼は、携帯を机の脇に置くと、いつものように本を読み出した。
数日後。
彼は、学校を休んだ。
朝練にも行ってないようだった。
(具合、悪いのかな)
確か、お父さんがお医者様だと聞いたことがあるので、そんなに心配は要らないだろうと、無人の席を眺めて1日を過ごした。
彼がいないテニス部の練習を見る気にもなれず、早々に下校する。
帰宅途中、いつも目にするストリートテニスコート。
そのベンチに、少し年上の女性が座って、穏やかな笑顔で見守っている。
(ああ言うデート、したかったな)
いいなぁ、と眺める脚が止まった。
建物の陰になっていた場所から姿を現したのは、ラケットを手にした彼だった。
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