She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第15章 さよなら、初恋
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氷帝学園前でバスを降り、学校へのルートの途中にある喫茶店を目指す。
創業の長い、レトロチックな扉を開くと、カラン、というベルの音と、いらっしゃいませ、という熟年層男性の落ち着いた声。
木目で設えられた店内。
通りに面したガラス窓の前のテーブル席に、見慣れた白のブレザー。
パラ、と捲った机上の本から上げられた顔に、小さく手を振る。
「ごめんね、待たせちゃった」
「急に呼んだん、俺なんやから気にせんでええよ」
「ありがとう」
会えたの嬉しい、と向かいの席に着く。
水と氷の入ったグラスを持ってきてくれた店主の男性に、ダージリンをカップで注文する。
「なに飲んでたの?」
「ホットのラテ」
冷めた残りを飲み干した侑士は、ソーサーに置いたカップの淵を弄んでいる。
「おまたせしました」
紅茶を運んでくれた店主にお礼を言い、ストレートで一口飲む。
「マコト、」
あんな、と言って黙った侑士は、机の木目を静かに見ている。
もう一口飲んだカップを置き、白いおしぼりを広げる。
端から巻いて折りたたむ。
そうしてできたタオルのアヒルを、侑士の目線に置いた。
「なんや、これ」
「今日のゆうの話相手」
話相手?と目も羽もないアヒルを見つめる。
「この子は目線とか表情とか気にならないから、いい話相手になると思います」
そう言って、先程の侑士と同じように、バッグから本と眼鏡を出して読み出した真珠。
「満足行くまで、お相手してくれますよ」
本に目線を落とし、紅茶のカップを取る。
1枚、頁を捲った真珠に、ふと笑みが溢れる。
「なあ、聞いてや、アヒルちゃん」
眼鏡越しに一瞬、侑士を見た真珠。
「今日な、クラスの女の子に告白されてん」
真珠の文字の列を追う目線の動きが、少し早まった。
「なんや、自分が好いた人できたせいか、答える気持ち無くても、申し訳のぉなってしもうた」
悪いことしてるわけちゃうんよ、とアヒルの嘴を突く。
「その子の方が良かったとか、そういうことちゃうんよ。
告白が嬉しかったわけでもないんやで。
正直、めんどくさ、言うのが本音なんやけど、マコトのこと思ったら、なんや、傷つけたような気になってしもうてなぁ」
わかるか?と指先でアヒルの頭を撫でている。
「もし、逆やったら、腸煮えくり返るほど腹立つからやろうなぁ
『マコトのなに知ってんねや』て」
