She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第15章 さよなら、初恋
「ぅ忍足っ!」
ドカ、と肩に乗ってきた腕に、痛っと振り向く。
「元気、なったんか?」
関西弁を真似してニヤニヤと笑うそれなりに親しいクラスメイト。
「?ただの風邪や」
昨日学校を休んだからだろう、と教室に向かう。
「へー、ほーん。
じゃあ、最近、バスでイチャイチャしてたのは風邪菌かなぁ?」
めんどいやつ、とため息をつく。
「はっきり言いや」
「誰だ、あのお姉さんは〜!?」
バス一緒だったよね!?昨日公園にいたよね!?と続けられる詰問に、しゃあしぃな、と教室の席に着く。
「姉ちゃんいるって言ってたよね?
姉ちゃんだよねっ!?ねっ!?」
なんの念押しやねん、と机の向かいに立つ同級生を見上げる。
「まさか、彼女とか言わないよねっ!?」
「いや、あんさん、俺の彼女か」
まるで浮気疑われとる気分やわ、と鞄から本を取り出す。
「なしてそんなに気になるねん?」
「いいからっ!付き合ってるの?友達なの?他人なの?」
変なやつ、と本から顔も上げずに答える。
「見たんが誰か知らんけど、年上でちっこくて、脚のキレーなオネエサンとお付き合いはさしてもろてるよ」
他人の色恋がそんなに気になるか、と頁を捲る。
次の途端、よっしゃあ!とか、嘘だ〜、とか教室の男子生徒が騒ぎ出した。
「何やねんな、自分ら」
驚いていると、詰問を続けてきたクラスメイトに手を掴まれる。
今朝も、一緒のバスに乗った真珠と繋いでいた手。
つい、ふんっ!と、振り払う。
「信じてたのに〜!
お前は、テニス一筋の硬派と信じてたのに〜」
がっくりと肩を落とす同級生に、長いため息をつく。
「人様の色恋でチンチロしなや」
しょーもな、と再び本を開く。
「持ち上がり組の楽しみなんだよっ!
彼女ナシが進級で彼女できるかできないか。
中等部進学時に転校してきた忍足だって、大阪に彼女いるかいないか、賭けてたんだぜ?」
「知らんかったわ」
くだらんことしとるのぉ、と呆れて同級生を見やる。
「春休みにベットした高等部版は、中等部の時を踏まえて殆どが忍足は『作らない』に掛けたのに、まさかの1番手で『作る』抜けっ」
大番狂わせだって!と勝手に盛り上がっている。
同じ思春期男子としてわからなくもないが、気に入らない要素もある。
「アホちゃうか」
始業チャイムとともに溜息が漏れた。
✜
