She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第14章 新婚さんごっこ
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ジャッ、ジャッ、とリズムよく鳴る米。
冷水で流し、キチリと水を切った真珠の手つきを見る。
「手慣れとるねぇ」
「ゆうほどじゃないよ」
苦笑いで、包丁を拭く侑士を見る。
キッチンの作業台に置かれたまな板には、細切りされた生姜。
小皿にそれを移すと、侑士は冷蔵庫からタッパーを取り出した。
「きずしあるんなら、言うとってほしかったわ」
蓋を開けると、甘酢の香りがする。
「『きずし』?」
その中のものに、お魚、と言う真珠に、水気を切ってから、少し切った端を、つまみ食い用、と真珠に渡す。
「〆サバ?」
おいしい、と笑った真珠。
「酢で〆めた魚を、関西やと『きずし』いうんよ。
〆サバやったら、『サバのきずし』。
これは、『サゴシ』言う、サワラのちょい小さいやつ。
おかんが作る『サゴシのきずし』、好きやねん」
俺も、と小さく切った一欠をつまみ食いし、うまい、と笑う。
切り分けて皿に盛られた魚を、ふむ、と見る真珠。
「作るの、難しい?」
「いや?〆酢の分量だけ覚えたらええし。
あー、でも、各家庭っちゅうか、作る人で微妙に味はちゃうな。
おかんが作るきずしとばあちゃんの作るきずし、味ちゃうし」
おとんの実家で食べるやつもまた違う、と小皿に分けた漬け酢に醤油を混ぜ、つけダレを作った侑士。
「ゆうが好きなら、教えてもらおうかな」
きずしの作り方、と炊飯釜にコメをうつす真珠。
「お魚、捌くところから教えてもらわなきゃ」
普通の塩サバとかでも作れるかな、と水を加えた釜を炊飯器にセットする。
あとは、と夕食作りを手伝っていた真珠は、なに?と侑士の目線に問いかけた。
「なんもあらへんよ」
「?そう?」
汁物作る?と聞く真珠。
完成したつけダレの小皿を作業台に置き、お味噌ある?と冷蔵庫を探している背後から抱きしめる。
「なにー?」
「...新婚さんごっこ」
「またそういうことを」
もう、と照れ笑う真珠は、味噌を取り出して冷蔵庫の扉を閉める。
「そっか。
私、恵里奈に『弟さんをください!』って言わなきゃいけないのか」
「貰われる側なん?俺」
「調月、名乗る?」
「『調月 侑士』...
『忍足 真珠』の方が、語呂はよおない?」
「なんかすっごい男の子感ある名前になるね」
中性名やもんね、と鍋に水を汲んでいる真珠の横顔を見つめた。
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