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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第14章 新婚さんごっこ



ウチ寄りや、と言われて侑士の部屋に入ると、トン、と壁際に追い詰めてきた侑士を見上げる。

「お、忍足くん...?」
「なんや、真珠にそう呼ばれるん、変な感じやな」

ニコッと笑う顔から顔を背ける。

「ずるいっ」
「話、逸らしなや。
 ガクトとなに話しててん?」
「えっと、それは...内緒?」
えへ、とナイショのサインをする人差し指を掴む。

「気ぃ長い方ちゃうよ。はよ言ぃや」
「て、テニスの話、ですよ?
 えー、アグレッシブとか、ボレーとか」
ふーん、と目を細めて見下ろす侑士。
「ほな、俺のプレースタイルは?」
「オールラウンダー!」
即答した真珠に、ふむ、と考える。

「進行方向と逆に回転をかけることを?」
「えっ!?えっとぉ...」
逆?逆回転...回転...ターン?と考える真珠。
「5.4」
カウンドダウンし始めた侑士に、待って待って!と考え込む。
「1」
「ば、バックターン!」
「ぶー。バックスピンや」
スピン、と項垂れた真珠の頬を掴む。

「罰ゲーム」
そう言ってコツ、と額を当てる。

「ちゅーする?」
「意外と恥ずかしがらへんのやね」
おもろないな、と侑士は考え込む。
「彼女で面白がらないでください」
「おもろくはないで」
「ゆう?」

真珠の肩に額を乗せた侑士。

「ガクトに妬く、思わんやったなぁ」

やく...?と呟いた真珠は、え?と侑士の方へ顔を向けた。

「こっち、向きなや」
「...むちゃ、言わんとって?」
んん、と抱きついてきた侑士の確認できる場所は耳と首筋だけ。
それでも、赤みを増している事はすぐに分かった。

「言うたやろ」
なに?と侑士に掴まれた手の行方を目で追う。

「『あんまし妬かせんとって』て」
目線を繋いだまま、掌に軽いキスをする。

「気ぃ、長い方ちゃうんやから」
繰り返しそう言うと、より距離を詰めて、頬に手が添えられる。

「ゆう...」
至近距離で見つめた瞳が笑った。

「自分、空気読むん苦手やろ?」
「そ、そんなことないっ」
「下手やん」

ふ、と笑った顔に見惚れていると、暗転する視界。

「早よ、慣れや」

優しく塞がれた唇に触れる体温は相変わらず低い。

けれど、瞼を覆う掌は温かく、体温の低い唇は、徐々に熱を上げているように感じた。

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