She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第13章 彼の一番かっこいいところ
「跡部さん、なんて言ったの?」
「『フィッチ?』
『どっちにする?』って意味。
先攻後攻決めるのに、ラケットの持ち主が、ネット挟んで相手側のコートでラケットを回す。
今、侑士が『ラフ』って言ったのわかった?」
うん、と隣の向日の解説に耳を傾けながら、コートの2人に注目する。
「侑士は、跡部のラケットが『裏』に倒れるに賭けた。
裏だったみたいだ。
選んだ面が上だった方が、サーブを取るか、コートを取るか選ぶ。
ちなみにその権利を相手を譲るってのもありだぜ」
なるほど、と試合開始を見守る。
跡部がボールを持っているため、侑士はコートを選んだらしい。
「ザ・ベストオブ 10ポイント マッチ!
跡部、サービス トゥ プレイ」
「先に10ポイント取った方が勝ち。
跡部のサーブからはじまるよ」
向日の解説後、ボールを空中に放った跡部。
パカン、パコン、とラケットに跳ね返されるボールの音が続いている。
様子見、というように打ち合っている跡部と侑士。
「1-0!」
隣で向日が声を上げた。
「侑士、意地悪ぃ」
面白そうに笑う。
「あいつ、そのつもりだったのか気が変わっただけか知らないけど、今、エグいフェイントかけた」
だから侑士とはやりづらいんだ、と溜息をつく。
「跡部さんの、左側に打つように見せて、右に返したこと?」
ボールの軌道を当てた真珠に、わかってんじゃん、と向日はガムを膨らませた。
「跡部さんもゆうも右利きだから、攻めるにはやっぱり左側を狙う?」
「そう言うわけでもないかな。
利き手を気にする時もあるけど、どちらかと言えばプレースタイルの方が気になる」
プレースタイル、と真珠は二人の動きに集中する。
「二人は、同じプレースタイル?」
「そう。跡部も侑士も、オールラウンダー。
ちなみに俺はサーブ&ボレーヤー」
「ゆうと向日くんでダブルスなのは、プレースタイルが違う2人が組めば、どんな相手にも対応できるから?」
「んー。プレイスタイルもあるけど、性格的な相性の方が大きい。
単純に、ダブルス向いてない性格のやつとかいるし」
跡部とか跡部とか跡部とか、と指を折る向日に笑う。
「ちょっとわかるかも。
跡部さんがシングルスプレーヤーっていうの」
侑士が打った球が、跡部側のコートでネット際に跳ね返った。
