She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第12章 DATE in HOME
「甘酒も酒と違うん?」
私室で、一緒にラックからレコードを選ぶ真珠に聞く。
「麹で作る方法と酒粕から作る方法があってね。
酒粕はその名の通り『お酒を搾った粕』だから多少のアルコール分があるんだけど、おじいちゃんのところは麹と米だけで作る製法だからノンアルコールだよ」
市販のどろっとした感じじゃなくて、麹の粒が残っててさらっとしてる、と言う。
「小さい頃からそれしか飲んでないから、酒粕で作る甘酒、苦手なんだ」
あのアルコールの香りがなんとも、と苦笑いする。
「市販にも麹100%の甘酒ってあるんだけど、なんか違くて、甘酒だけは絶対うちのが一番美味しいと思ってる」
「そこまで言うんやったら、めっちゃ期待してまう」
「ぜひ期待してて」
言い切った真珠は、あ!と1枚のレコードに目を留めた。
「『初恋』!」
「村下孝蔵な」
サビのメロディを口遊む侑士。
「聞きたいっ!」
「貸してみ」
レコードプレーヤーにセットする様子をわくわくと見つめる真珠。
部屋を包み込んだ音楽に、真珠は、ほう、と息を吐いて目を閉じた。
♪〜
唇で口遊み、身体を揺らす。
曲が終わると、抱えた両膝に頬をつけ、聞いて良い?と見上げてくる真珠。
「初恋、覚えてる?」
え?と考えてみる。
(初恋...)
あっただろうか?と自身の記憶を駆け巡る。
(初めて、恋をしたのは...)
「覚えてない?」
問いかけてくる瞳に、そうやね、と近づいて頬に触れる。
「想い通じた言う意味では、マコトが初恋やろね」
軽く親指で触れた唇。
「せやけど、初恋は叶わん言うからな。
マコトやったら困るから、誰かに恋しとったことにしとくわ」
「だから、ズルイ」
膨れた頬を指先で摘むと、ぷしゅ、と唇から漏れた空気。
「マコトは?」
「ひかない?」
「内容によるな」
じゃあ言わない、とそっぽを向いた真珠を、冗談や、と抱き寄せる。
「おじいちゃんの蔵の蔵人さん。
5,6歳?の頃で、たぶん当時40,50代くらいだった人」
「また、えらい年上やったね」
たまに家に来るお父さんの仕事の同僚、など、女の子の初恋としてはよくある話か、と髪を撫でる。
「京都の人だからね、関西弁で話すの」
「マコトのツボは、関西弁やった言う事か?」
なおさんでよかったわぁ、と小さな頭に頬擦りをした。
✜
