She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第12章 DATE in HOME
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「いくで?」
ごくり、と固唾を呑む真珠の向かいで、よっ、とステンレスのヘラを返した。
「おいしそー!」
まだかな?まだかな?と待ち遠しそうにする真珠は、小さなヘラを手に、返されたホットプレートの上のお好み焼きを見つめる。
「一回、食べてみたかったんだっ
大阪のお好み焼き」
昼、なに食いたい?と、聞かれ、本場のお好み焼き!と答えた真珠は、ワクワクを隠しきれていない。
「こっち来て、家でお好み焼きせぇへん聞いてびっくりしたわ。
これも、当たり前に各家庭にあるもんやと思っとった」
カン、と侑士はヘラを鳴らす。
「ん〜、お祭りメニューってイメージ。
少なくとも、うちの場合は、家でのごはんで食べる感じじゃないなぁ」
「たこ焼き器も無いん?」
「無いよ〜。あるの?」
「大阪やったら、一家に1台絶対ある。
家によっては、2、3個あるで。
焼きピンは家族の人数分とか」
「『焼きピン』?」
くるくる回すアイスピックみたいな、と言われ、あー!とイメージにあるそれを浮かべる。
「たこパしてみたい」
「ええね。作ったるよ、本場のたこ焼き」
「やった!やろう!ロシアンたこ焼き!」
なんでやねん、と焼けたお好み焼きにソースを塗る。
「たこ焼きと言えば、でしょう」
「たこでええんや。
なに入れる気やねん」
「えっとね、わさびマストでしょ?」
マストの基準がおかしい、と侑士は笑いながら鰹節と青のりをふる。
「ハズレはウインナーとかチーズとかで、あたりはデスソースとダイスカットのにんにくね」
「あたりとハズレ、逆や」
案外エグいこと考えるな自分、と切り分けた片方を皿に乗せて真珠に渡す。
「ゆう、やっぱりお好み焼きとごはん、一緒に食べる?」
「せやね」
「うーん、やっぱりテニスしてるが故なのか?
その羨ましすぎる体型」
「それ、めっちゃ女ん子に言われんねん。
『それだけ食べてよくその体型保てるね』て。
朝練して、日によっては体育して部活するんやで?
むしろ食わな持たへんって」
ただでさえ成長期やぞ、と笑う。
「全部、縦にいってるのかな?」
今身長いくつ?と膝立ちになって、べたに座る侑士と背比べする真珠。
「こん前の身体検査で丁度180いった」
「じゃあ、勘ちゃんより2cmおっきいね」
そうなん?と言いながら、侑士は内心で小さくガッツポーズした。
