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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第2章 それが始まり



 ✜

姉を待つ時間を潰すため、書店に併設されたカフェのひと席を取った。

「え、マコっさん、わかるん?」
「わかります。アン・ルイス」
鼻歌でサビを歌うマコト。
「ほんまかいな」
学校のことや趣味のことを話していたら、侑士が好んで聴く音楽の歌い手を次々と当てていくマコト。
同世代、と言えるか怪しいが、年が近くて音楽の好みが同じだったのが嬉しくて、せやったら、とプレーヤーを取り出す。

「この辺とか...」
どれ?とサイドの髪を耳にかけて、侑士の手元を覗き込むマコト。

(わ、めっちゃいいにおいする)
シャンプーか香水か。
以前も香った、甘すぎず柔らかい嫌味でない香り。

(「女の子の匂い」やなぁ)

あかんっ変態やん、とプルプルと頭を振る。

「どうしました?」
なんでもあらへんよ、とプレーヤーに目線を向ける。


「あ、カリフォルニア・コネクションはヘビロテです」
今じゃすっかり変わり者刑事さんの役のイメージ、とリストをなぞるマコトの指先。
「うん、だいぶ被りもある」
これもあるでしょう、と侑士のプレイリストを楽しそうになぞる。

「マコっさん、カラオケとか行くん?」
「行きますよ
 けど、このあたり歌っても知らなーい、って言われちゃいます」
「十八番、あるん?」
どんな曲やろ、と、んー、と考えているマコトを見つめる。

「この前、同期と行った時は、『風になる』とか」
「ジ〇リ系?」
無難でしょう?と笑ってみせる。

「恵里奈と行く時は、『君は天然色』とか『青い珊瑚礁』とか」
ええねぇ、と自分も好きな歌に頷く。

「ふふ。聞いてた通りです」
マコトに、なにが?と問う。

「前にカラオケ行った時に、恵里奈に言われました。
 『ゆうちゃんと話、合うと思う』って」

確かに、と観たかった映画も同じ。
よく聞く曲も近い。

「旧い曲が好きって言っても、幅広いでしょう?
 ここまでドンピシャとは思いませんでした」

そう言って、脚を組み替えたマコト。
ロングスカートのサイドには深めのスリットが入っていて、アンクル丈のソックスを履いた脚がよく見える。

(やっぱ、キレーな脚、しとるなぁ)

オレンジジュースのカップの縁に唇をつけたまま、そこに目線が釘付けになった。


 ✜
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