She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第11章 煽り、煽られ、歩調合わせて
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「どっちがええ?」
差し出されたのは、ストレートとレモンの紅茶のボトル。
「コーヒー、飲めへんやろ?」
ありがとう、とレモンティーのボトルを受け取る。
平日の午前。
警察署の前で高校の制服のままいるのも落ち着かないので、真珠の手を引いて向かったのはバス通りから外れた河川敷。
途中の自販機で買った飲料を手に、天気ええねぇ、と侑士は河原に降りる階段に腰掛けた。
「あの、ゆう、学校...」
おずおずと隣に腰掛けて聞く真珠に、気にせんでええよ、と春の風に舞う髪を掻き上げる。
「今日は、英コミと現国と情報、音楽...午後はドイツ語と化学...やったっけ?
多少休んでも問題ないさかい」
「第三言語、ドイツ語?」
「ん。フランスとギリシャとドイツとスペインから選ぶねん。
ドイツ語やったら、ちぃとはわかるし」
「さすがお医者様の息子さん」
ごめんね、と言う真珠の風に乱れた髪を整える。
「ええよ。青春映画みたいやん?
彼女と学校サボっとったら、顧問とか同級生に見つかって逃げるんや」
「怒られちゃうもんね」
ふふ、と笑った真珠の手を取る。
「せや。
『バレた!』言うて、手ぇ繋いで走るんよ。商店街を」
「なんで商店街?」
「そら、相手、撒かんと。
人混みん中、やいやい言われながら手ぇ繋いで抜けて、『ここまでこれば』っちゅうところまで走って、『逃げ切った』言うて笑い合うんよ」
侑士が言う漫画や映画の演出に、あるある、と笑う。
「あーあ、年下彼氏くんを非行に唆す悪い女になっちゃった」
楽しそうに笑う真珠は、繋いだ手を揺する。
「一回のサボりで非行なんや?」
「十分不良少年だよ」
「まじめやね」
「え?ゆう、割とサボる方?」
「教室にはおるけど寝とる方」
「どっちも、どっち...かなぁ?」
変わらへん変わらへん、と笑う侑士の肩に頭を預ける。
「可愛ぇ一人娘なんや。
変な男に取られた無い、親心やろ」
「...わかってる」
「マコト、俺ん事好きになる変わった子やからね。
心配にもなるわ」
「ん?え?自分で言う?」
「割とけったいな方やと思っとるよ、己んこと」
俺のなにがよかってん?と心底不思議そうにする侑士に擦り寄る。
「こーいうところ」
「やから、どういうところ?」
教えてや、と聞く侑士に、真珠はただ、ふふー、と笑うだけだった。
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