She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第11章 煽り、煽られ、歩調合わせて
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「お、お邪魔しまーす」
「ふつーに入りや、いつもみたいに」
怯えたように忍足家の玄関に入る真珠。
「いえ、なんか、なんとなく悪いことをしているようで...」
「おかんは、今日はなんや、友達に会う言うて夜までおらんし、姉ちゃんも今日はもう大学行っとるよ」
来ぃ、と玄関の三和土で立ち竦む手を引く。
「チャーリーズ・エンジェルの気分」
「誰が囚われてるんや」
「んー、恵里奈かな?」
「待ちや。
それなら俺はチャーリーかボズリーあたりやよな?
まさか『エンジェル』側にカウントされとるん?」
「っふふ。待って...ふふふっ」
ゆうがエンジェル、と笑う真珠。
「マコトが言い出したんやろ」
「そうだけど、ふふ。
そこまで話が広がると思わなくてっ」
いつもの笑い声に、(よかった)と安堵する。
「ボディコンスーツ着る?」
「あれ、男が着て誰が得するんや?」
「あ、やっぱりグラマラスなお姉様が着るべき?」
不二子ちゃんスタイル?と砂時計型を手で象る真珠を連れて私室に向かう。
「マコトが『見たい』言うなら、着たるよ?」
冗談に笑って言うと、うーん、と考え出す真珠。
「ゆうに着せるなら...やっぱり白衣かな?
あ、スーツとか燕尾服!
あの、片目だけのメガネかけて、執事さんとか」
モノクルな、と私室のドアを開ける。
「片付いとるんかはわからへんけど」
入り、と言われ、うん、と緊張気味に足を踏み入れる。
扉の壁沿いに洋服箪笥とWIC。
扉の向かいの下ろされたブラインドの前のデスクにはデスクトップPC。
観葉植物、本とオーディオが収められたラック、シングルベッドに本棚。
恵里奈の部屋と反転している間取りに、えっと、と立ち竦む。
「適当に座ってええよ」
制服をハンガーに掛け、ネクタイを緩める侑士。
「なんか流すか?
好きなん、あるとええけど」
ベッドの脇に置かれた、ラックのマガジンディスプレイ部分を開ける。
「レコード!」
「聞けるで」
好きなん選び、と言われ、真珠はラック前に座り込んだ。
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