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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第11章 煽り、煽られ、歩調合わせて



 ✜

 -警察署前、警察署前-

いつものアナウンスに顔を上げる。
家を出た、と伝えてから返事が無く、バス停を見ると、バスを並ぶ列に姿は無い。

二度寝でもしたか?と乗り込む列が無くなった時、バス停のベンチに座り込む姿を見つけた。

混み合ってきた車内で、慌ててラケットバッグを担ぎ、すんません、と人を掻き分けて降りる。

「マコト」
ハッ、と顔を上げると、うっ、と唇を噛んで俯く。
どないした?と聞こうとした声は、トス、と抱きついてきた真珠に消えた。
「マコト?」
「...っ...」
「マコト?泣いとるんか?」
震えはじめた肩に、縋り付く身体を抱きしめる。

「おっかない事、あったんか?」
ふるふると左右に振られる頭を撫でる。
「喧嘩でもしたんか?」
反応のない答えに、そうか、と背を撫でる。
「やな事、言われてもうたん?」
グズ、と啜り泣きの声に、そうか、と熱くなっている頭を抱き寄せる。

「きょうだい、いてへん言うてたな。
 したら、オトンかオカンか」

一人娘なら父親よりも母親やろか、と髪を撫でる。

通勤通学ラッシュの中、バス停前に陣取っているわけもいかず、来いや、と真珠の手を引いて、警察署の外壁沿いにバス停を離れる。
大きな交差点に置かれたベンチに座らせ、落ち着くのを待った。


ようやく顔を上げた真珠。

「顔、べしょべしょや」
手持ちのハンカチで頬を拭うと、いいよ、と背向ける顔を捕まえる。
「あーあ、べっぴんさんが台無しやん」
「...ゆうの方がべっぴんさんだもん」
「そか?
 ええ男の前で泣くんはもったいないで?」
僅かに笑った頬に張り付く髪を払う。

「なんがあってん」
話した無いならええけど、と聞く。
「母が、」
「おかあはんが?」
「ゆうの事、やな風に言うから、ムッとして」
やな風?と聞き返した時だった。

「真珠ちゃん!」
路駐の軽トラから降りてきたのは、作業着姿の勘助。

「ごめん!俺が余計なこと言った!」
「勘ちゃんが悪いんじゃないよ。
 母にムッとしただけだから」
けど、と言った勘助は、侑士を見た。

「俺が悪いんだ。
 佑里子さん...真珠ちゃんのお母さんに、君の事を勝手に話したから」
「親に言うてなかったんや?」
「あの、なんか、恥ずかしくて...言い出せなくて」

そうか、と頷き、ごめん、と立ちすくむ勘助を見た。
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