She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第10章 First Kiss
「ごめんなさい...シャツが」
涙で濡れた跡を申し訳なさそうに撫でる。
「気にせんでええよ」
「本当に、ごめんなさい」
「謝らんとってや。寒ないか?」
こくん、と頷く真珠。
呼吸が落ち着いているのを確認し、手を繋ぎ直す。
「マコトが心配すること、なんもなかったで?」
「けど、」
「緊張しとったやろうし、あないな人数に予告もなく会わせたんも、ジローが転がってきたんも突然やったし。
むしろ、よう丁寧に対応したもんや」
マコトはすごいなぁ、と笑い掛ける侑士は、笑顔のまま言い放った。
「ジローは許せんけど」
その言葉に、ふふっ、と笑う。
「ん、ようやっと笑うた」
「だって、ふふ、気にしてたの?」
当たり前やん!と眉を跳ね上げる。
「ゆうもヤキモチ焼くんだ」
「...嫉妬しぃの男、嫌か?」
複雑そうな顔で、繋いだ手の指先で真珠の手を撫でる。
「自分でも、知らんかってん。
結構、その、独占欲っちゅうか、嫉妬しぃなんかも、しれへん...」
くしゃ、と片手で前髪をかき上げる。
「俺がまだ知らん自分のこと、引き出したんが他のやつやったこと、ちょっと引っかかっとるし...
もう、見ようがないてわこうてるのに、高校生の真珠を知っとる姉ちゃんとかが羨ましい思う。
勘助、はん...言うたっけ?真珠のオトンの同僚やっていう...
俺の知らん真珠を知っとるんかな、思うとちょっと、な。
今日も、跡部がそういう奴や言うのもわかっとるけど、『マコト』て呼んだん、どっかで嫌やってん...
ジローやって、あいつ、なんも考えんと、「寝やすそう」だけで転がったんやとは思うけど...
あいつらと仲良ぅしてくれるん、嬉しいはずなのに、ちょっと、このあたりが...」
乾き始めたシャツを強く掴む。
「苦し、なるんや」
ギュッ、と音を立てる侑士の手。
「気持ち、隠すん、得意なんやけどな」
感情を殺そうとしているかのように吐かれた息の震え。
「ゆう」
ゆっくりと上げた顔。
する、と眼鏡を外され、あ、と声が漏れる。
「隠さないでほしいよ」
つるを丁寧にたたみ、侑士の上着の胸ポケットにしまう。
「いろんな気持ちとか、考えとか、たくさん見せて?」
ね?と笑った真珠の瞳に吸い寄せられるように、立ち上がる。
「マコト...」
目を閉じた真珠にキスをした。
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