She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第10章 First Kiss
少し前を歩く侑士を見られず、俯いて自分の足を見つめる。
(侑士くんみたいに、余裕もってられないなぁ)
せっかく彼の友人に紹介してもらえたのに、まともに話せてたかも自信がない。
(さっきだって...)
目を閉じればよかった、とわかっていたけど、慌てるばかり。
(つまらない女だなぁ)
「マコトっ」
ぐいっ、と後ろに引かれた腕にバランスを崩す。
トス、と背に触れるぬくもり。
「信号、赤や!」
「え?あっ」
目の前を通り過ぎたタクシー。
交差点で立ち止まった侑士に気付かず、そのまま赤信号を渡ろうとしていた。
「どないしてん?
具合、ようないんか?」
熱は?と前髪を払って額に触れる手。
(手、大きいなぁ)
ちょっと熱いか?と自分の額の温度と比べている侑士。
「今日、ほんまは体調良うなかったんとちゃう?」
違う、と首を横に振る。
「それか、あれか?
ジローに膝枕させられたん、嫌やったか?」
そんなら明日どついたるから、と言われ、なお、違うのっと首を振る。
心配そうにしてくれる表情に、降ろされた手を握る。
「あの、今日、ごめんなさい」
「なにがや?」
「その、部員さんや後輩さん達に紹介してくれたのに、ちゃんとご挨拶、できなくて...」
ごめんなさい、と言う頃には、頬に一つ、二つと筋が流れ、泣くべきじゃない、と唇を噛む。
「ずっと、挙動不審だったし」
「マコト、」
「きちんと、話すこと、できてっなかったっ」
「マコトっ」
「さっき、だって...」
パタ、と手にひとつ、涙の粒が落ちていたのに気づいた時には、少し低い、それでも温かい体温に包まれていた。
「落ち着きや。
負担、掛けてもうたね。堪忍え。」
すまんかった、と髪を撫でる手の優しさに、緊張と不安で固まっていた気持ちが解けていく。
と、同時に、どんどん緩んでいく涙腺から溢れさせまいと唇を噛む。
「来ぃや」
手を引く侑士が向かったのは、後ろの公園。
もう遊ぶ子もいない静かな公園の東屋のベンチに真珠を座らせる。
「ごめん」
「マコトはなんも悪い事しとらんよ。
緊張しとるん、気ぃ付いとったんにフォローせんかったんは俺や」
頬の涙を指先で拭う。
「いっぱい泣いてええよ」
瞬きに溢れた涙で濡れた頬に張り付く髪を、一つずつ払う。
「泣き止んでも、ずうっと一緒におったるから」
