She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第10章 First Kiss
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「すっかり、遅なってしもうた」
溜息をつく侑士。
「侑士くんの親しい人たちに会えてよかった」
真珠は、さっきまでいた部屋がどこなのかも分からない巨大な跡部グループのホテルに、お邪魔しましたぁ、と言う。
「とりあえず、明日、ジローと宍戸は、のす!」
なんでぇ?と苦笑いの真珠の手を取る。
「慈郎君、あのまま寝ちゃうのかな?」
跡部の指示により樺地にベッドに転がされていた芥川。
「頃見て起きるんちゃうん?
それか、跡部が車、出すやろ」
「えっ跡部さん、運転できるのっ!?」
見上げる真珠に、ちゃう、と言う。
「送迎車、呼ぶやろ」
そういう事、と頷く。
「ふふ」
満足そうに笑う真珠の手を取り、どないしたん?と指を絡めて繋ぐ。
「ゆうのいろんなこと知れた日だったな、と思って」
バイオリンのことも、学校でのことも、と言う真珠。
「知ってることなんて、ゆうのことのほんの一部だったなぁって。
部員さんにいろんなこと、教えてもらえてうれしかった」
交差点で止まり、真珠の腕を引き寄せる。
「そう言われたら、不思議やね」
んー?と見上げた真珠。
「まだ、マコトのこと、ほとんど知らへんのに、なしてこんなに好きなんやろ」
繋いだ手を持ち上げ、狭い手の甲にキス。
恥ずかしそうに俯いた真珠が、ゆっくりと呼吸をして見上げてくる。
片方から歩行者用信号の赤に照らされているだけではない顔の赤みに気づき、そっと頬を撫でる。
その手に擦り寄った顔を少し、上を向かせる。
(ヒール履いとっても、ちっちゃいのぉ)
自分の肩の少し下で見上げる髪を撫でる。
ゆう、と呟いた真珠の唇から漏れた吐息が、なんやん?と返した唇に触れる。
聞き慣れたメロディ信号の音色に、ハッ、とした真珠。
あの、えっと、と目線が落ち着かない様子に、くすり、と笑う。
「行こか」
屈めていた背を伸ばし、優しく手を引く。
(急くことないわ)
とと、と、駆けるようについてくる真珠に気づき、少し歩調を緩めた。
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