She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第9章 レギュラー
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呼び出しの理由が真珠であることを知った芥川と宍戸。
「俺、知ってたよー」
ジュースを吸い上げながら、そう言ったのは芥川。
「前、雨で練習が休みになった時さ、マコトちゃんといるとこ見たよ。
二人で傘差して歩いてたよね」
「...ああ、そうか。
ジローん家、あの路線沿いやね」
角にクリーニング店あるやろ?と言われ、風景を思い出す。
「...あっ、『芥川クリーニング』」
「そこ、ジローん家やねん」
そだよー、と言って、芥川は大きく欠伸をする。
「クリーニングはぜひ、芥川クリーニングをよろしくぅ」
むにゃ、と目を閉じかけた芥川。
んー、と辺りを見ると、忍足ぃ、と目元を擦る。
「なんや?」
「こっち行って...そうそう。マコトちゃんもぉ」
ふぁーあ、と大あくびをして、二人を片方に押しやって出来たスペースにコロン、と寝た。
「芥川くん?」
ふすー、と寝息を立てだした。
「ジローはどこでも寝るんよ」
起きとる方が珍しい、と言う侑士が、ベッドに行きや、と言うが、すでにくかー、と寝ている芥川は、コロンと寝返る。
「あら」
「なっ!」
真珠の膝を枕にして寝始めた芥川。
「こらっジロー!」
「大丈夫。疲れてるのかな?」
眠たかったんだねぇ、と言う真珠。
「ジローはいつもそうなんや。
どこでも寝るし、いつでも寝てまう」
そこで寝らんでもいいやろ、と間抜けに見える寝顔を睨める。
「羨ましいんじゃ」
ムッ、として言った侑士。
(意外と、ヤキモチ焼き、かも?)
隣に座る侑士の手に、手を伸ばす。
ひたり、と触れた指先。
筋と節が目立つ手に指先を這わす。
甲の筋の窪みを撫でたり、浮き出ている血管をなぞったりしていると、絡め取られる指。
少し上の顔を見上げると、目が合った。
互いに何か言うわけでもなく、見つめ合う。
太陽光に当てられている時よりも分かりづらいが、見つめる侑士の虹彩にわずかなブルーを見つける。
瞼の流線形が滑らかに伸びている。
「私、やっぱり侑士君の瞳、好き」
驚いた顔をして、ふい、と逸らされた目線。
「きゅ、急になに言うんや...」
「ふふ、ごめんね?
でも、好きよ」
笑顔で見上げる真珠。
「意外と純情少年だね」
「うるさいわっ!ほっといてや」
顔を背ける侑士の耳先が赤いのに気づき、ふふ、と一人、笑った。
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