She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第9章 レギュラー
掌に鼻下を埋めて目を閉じる侑士。
(本当にこの人、高校生なのかな)
僅かに掌に感じる唇の感触に気づき、ドキリとする。
「侑士、く、ん」
それを知ってか、唇で掌の柔らかいところを喰まれ、ん、と身動ぐと、腰を引き寄せて抱きしめられる。
強く掌に押し付けられる唇。
「あ、あのっ」
「んー?」
「えっと、その...みんな、困って、ます、よ?」
振り向く真珠の向こうで、向日が鳳に言った。
「見たか?長太郎。
侑士はああやって女の子、誑かすんだ」
いたずらっ子のように笑う向日に、人聞きの悪い、と言い返す。
「誑かしてへんよ。
誰にでもするわけないやろ」
そう言いながら、掌にキスを繰り返す。
「侑士くん、みんな困っちゃうから、あとでね」
やめて、とやんわり手を引いて宥める真珠。
「部員さんを困らせちゃだめ」
不満そうな侑士の手を撫で、ソファの座面にそっと置いた。
軽めのドアベルが鳴り、入れ、と言う跡部の声で部屋の扉が開く。
「景吾様、御学友の方がお見えになりました」
「通せ」
承知しました、と退室したホテルマン。
「まだ、誰か来る?」
「ジローと宍戸がいてへんね」
「ジローさん、宍戸さん...
侑士君含めて8人、ね」
氷帝中等部の昨年度のレギュラーメンバー、と確認している真珠。
「なになにー?突然の呼び出しって」
ふわぁ、と欠伸をしながら入ってきた癖っ毛の少年と
「なんだ、緊急事態って」
帽子の鍔を後方にして被る、スポーツ少年感満載の少年。
「宍戸さんっ!?」
その声を上げたのは、真珠。
「誰だ、あんた」
「え?」
宍戸さん...?と、帽子をかぶり直した宍戸の顔を見つめる。
「宍戸...きょう、さん?」
「亮だけど。
京は、兄貴」
「っ大変、失礼しましたっ」
弟さんでしたかっ!と謝る真珠。
「お兄様と、とても似ていらっしゃったのでっ」
「マコト、宍戸の兄貴のこと知っとるん?」
眉尻を下げて見てくる侑士に、実は、と話す。
「うちにいつも荷物を届けてくれるドライバーさんです。
すごく似ていらしたので、てっきりお兄様かと...」
「ああ、兄貴、配送ドライバーのバイトしてるんです」
「びっくりしました。
まさか中学生さんだったのかと...」
いつもお世話になっております、と会釈した真珠に、え?あ、はい、と宍戸は辿々しく返した。
