She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第9章 レギュラー
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「あん?じゃあ、マコトは司書かアーキビスト希望か?」
「そうですね。図書や歴史資料なんかに携わる仕事ができたら、と考えています」
「マコトちゃん、古文、得意なんだ?」
「古文書とか、見るの好きですよ」
「テニスに古武術を?」
「実家が古武術の道場をしています。
マコトさん、なにか運動は?」
「それがめっぽうだめで...」
「『N◯N◯』、読んでました」
「連載止まっちゃってるけど、なんか、何度も読みたくなりますよね」
「お若い作家さんではないのに、私たち世代でも違和感ないお話書かれているので、すごいなぁって」
「え?そうなんですか?」
「確かもう、ミドル世代では...」
「知らなかったです」
「あ、ごめんなさい」
「...」
「こういう水滴、なんか気になっちゃって
樺地さんも、拭きたくなるタイプですか?」
「...うす」
「同じです」
テーブルの上で汗をかいているグラスを拭く真珠。
同じように拭いていた樺地は、机の上にたまった水滴を拭っていく。
樺地とも割とスムーズにやりとりをしている真珠が、ぱっと、振り向いた。
侑士へと近寄ると、ソファに座る足元に跪く。
「痛むの?」
「は?」
服、汚れるで?と立たせようとした手を取られる。
「キツい?痛むの、この辺り?」
そうっと左手で触れたのは、右目の横、眼鏡のつるがある辺り。
「鎮痛剤いる?
あ、市販薬、やめたほうがいいのかな。
お父さんに聞いてみる?」
偏頭痛?と不安そうに覗き込む顔。
無意識に、ソファの肘置きについた腕で蟀谷の辺りを押さえていた侑士は、ちゃうよ、と居住まいを正す。
「マコトは、人に馴染むんがうまいな」
そう?と言った真珠を自分の隣に座らせる。
「お父さんの蔵にも時々遊びに行くし、大阪のおじいちゃんの所には、若いと同じ年くらいの人から上はもうおじいちゃんのお父さんの代から知ってるような人までいるから、広い世代と話す方ではあるかも」
そうなんや、と真珠の髪の先を指に絡める。
スルリ、と髪がすり抜けた指先は、優しく真珠の手を掬い上げた。
「あんまし、妬かせんといてや」
そう言って、掌と手首に2回、唇を押し付けた。
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