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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第9章 レギュラー



 ✜

跡部元部長に呼び出され早数時間。

忍足さんに腹パンを食らった向日さんの発言は、確かに女性がいる中では適さなかったな、と、向日さんを心配している横顔を見る。

跡部部長とのやりとりの雰囲気は、大学生のお姉さん、というワードで自分が思い浮かべるイメージのまま。
向日さんを心配していた彼女さんと目が合った。

微笑んだ彼女は、よく通る声で言った。
「えっと、お名前を頂戴してもよろしいですか?」
「日吉 若」
「鳳 長太郎です」
「日吉さん、鳳さん。お二人は...」
「中等部3年です」
「受験生さん、大変ですね」
懐かしいです、と微笑む彼女。

「あの、忍足さんに敬語なんですね」
瞬いた彼女は、それに気づいていなかったらしい。
そう言えば、と日吉。
「俺達にも。年下なのに」
下剋上、が信条ゆえか上下関係が気になるのだろうか。

「クセなんよ。
 気にせんとったり」
なあ?と忍足さんに声を掛けられて、すみません、と苦笑い。
珍しい癖ですね、と呟いた。

「なんや、緊張しとったりテンション上がると敬語になるねん」
「よ、よくご存知で...」
「当たり前やんか」
「聞き流していただけると嬉しいです」

分かりやすい、と彼女さんに笑い掛ける忍足さん。

「忍足さん、ちゃんと女性に興味あったんですね」
「日吉、どういう意味や?」
ん?と彼女さんに向けていた笑顔とは違う笑顔の忍足さんの横で、向日さんがようやく復活した。

「だって侑士、基本、女の子に冷たいじゃん」
向日さんの言葉に、意外です、と彼女さん。

「すっげー、冷てぇのっ!
 試合でも応援に返したりしないし、学校でも『話しかけんな』って感じ」
「そんな事、あらへんよ」
誤解やわ、と否定した忍足さん。

「別に使い分けとらんよ。
 仲ええか、そうでもないかだけやろ?」
「バレンタイン、断るじゃん」
「もらっても処理でけへんもん。
 貰う子と貰わへん子、分けられへんから一律に断っとるだけ...」
ハッ!として忍足さんは彼女さんの両肩を掴んだ。
「マコトのは貰うでっ!
 でっかいやつでも、日、掛けてもちゃんと食べるよて」
「ありがとう。じゃあ、このくらいのにしておくね」

これくらい、と彼女さんの両手で作られた丸を、もうちょい、と大きくしようとしてる忍足さんは、やっぱり、どこか浮かれているように見えた。

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