She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第9章 レギュラー
✜
「堪忍え。跡部はこういうやつやから...」
「場違いで本当に申し訳ないです」
跡部が部員と真珠を引き連れて移した場所は、近くのホテル。
「なぁ、ルームサービスってやつ?頼んでもいい?」
嬉しそうな向日に、好きにしろ、と言うと、跡部はスイートルームの応接セットの椅子に腰掛けている。
「で、お前が忍足の彼女か?」
「ハイ。
侑士くんとお付き合いをさせて頂いています、調月 真珠と申します」
跡部の向かいに侑士と横並びに座る真珠が、お見知り置きください、と言うのを上から下へと見る。
「マコト?
跡部は家族でもあらへんのやし、そないに堅ならんでも...」
「そんなに堅いです?」
「めっちゃガチガチやで」
「ふん。まあ、忍足の言う通り堅くなるな。
調月...生まれは?」
「東京です。
祖父母は京都に」
「ああ、なるほど。
調月っていや、日本酒の蔵元があるだろう?」
「はい、父の実家です」
「あそこの大吟醸『下弦の月』は、うまい」
「ありがとうございます...
あれ?跡部さん、御歳は?」
「ドイツやオーストラリアなら、16歳から飲酒可能だ」
ここは日本です、と溢した真珠。
「マコト、あんま跡部のこまいとこ気にしたらあかん。
持たんようなるで」
「なんだか、お見合いしてるような気分です」
「跡部とか?」
「いえ、その、跡部さんが侑士くんの親御さんみたいで...」
「俺、こんなオトン、嫌やわ」
「俺だって、お前みたいな狡猾な息子、願い下げだ」
「うっさいわ」
心の底から嫌そうな顔の侑士を、狡猾ですかねぇ?と見上げる真珠へ、言わせときや、と笑い掛ける顔に、へえ、と足を組み替える跡部。
「案外、溺愛してんじゃねーの」
それは侑士への誂いの言葉のはずだった。
「そうですかね?
実は、まともに男性とお付き合いとかしたこと無くて...
こうして恋人関係になったのも、侑士くんが初めてなんです」
「そうなん?」
うん、と頷く。
「元彼、いてへんの?」
いません、と首を振る。
「侑士くんが初めての恋人さんです。
あ、別れちゃったら、元彼さんになってしまいますね」
それはさみしいです、と言った真珠。
「俺、そのまま旦那になるでっ」
マコトを奥さんにするんや!と抱きついてきた侑士。
「唐突ですね...」
真珠はその髪を梳くように撫でた。
