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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第9章 レギュラー


少し人の流れが落ち着いた頃を見計らって劇場を出る。

「あっ!侑士っ!」

このあと、と真珠に声をかけようとした侑士は、忘れとった、と立ち止まる。

「...増えてますねぇ」

劇場前の通路を挟んだ向こうに見える顔ぶれ。
マコトちゃーん!と手を振る岳人の隣には日吉と鳳。

「なんでこないな時だけ真面目に待つねんっ
 しかも、なんで人間、増えてんねやっ」
もう嫌やぁ、としゃがみ込んでしまった侑士の髪をそっと撫でる。
「部員さん?」
「...後輩やで。
 背ぇ、高いんが鳳、ちっこいんのが日吉言うんや」
「えっと...もっと大きな人が、来ました、が?」
また増えたんかっ、と顔を上げる。

「お前はいっちゃん、来んはずの人間やろっ樺地!」
こちらを向いて会釈した樺地に、真珠も会釈する。
「っ待ちや、樺地がおる言うことはっ」
「っきゃっ」

小さな叫び声と共に横から消えた真珠を振り返る。

「よう、忍足」
「...そら、おるわなぁ」
おらん訳無いわなぁ、と立ち上がり、真珠の肩を持つ跡部の手を剥ぎ取る。

「気安ぅ他人の彼女に触るもんやないで、跡部」
あとべ、と呟いた真珠。
聞き覚えのある名前に、ハッとして侑士より少し視線が低い彼を見る。

(彼が、跡部財閥の...)

「...へぇ、まあ、お前らしい女だな」
見上げる真珠に言った跡部。
「どういう意味やねん」
跡部にそう言うと、真珠、と彼に向いている視線を自分に向けようとする。

「マコト?」
「ぁ、なに?」
少し呆けていたような返事に、どないした?と聞く。
「ううん。なんでもないよ」
「さよか?」
「ちょっと、一度にたくさんの人と会ったから、びっくりしてるだけ」
たくさん集まっちゃったね、と言う真珠に、堪忍え、と侑士は眉尻を下げた。

「ふふ」
「どないしてん?」
「今の顔、なんかかわいい」
仔犬みたいな表情してた、と言われ、恥ずかしさに手の甲で顔を隠す。

どうしましょうかねぇ、と団体化している部員を眺める真珠。

「ここで屯ってもしょうがねぇだろ。
 場所を移すぞ」
ついてこい、と部員を引き連れていく跡部に、どうします?と隣の侑士を見上げる。

「お前等が来ねぇと始まらねぇだろ」
振り向きざまに言って先頭を闊歩する跡部。

「しゃあないのぉ」
せっかくのデートが、と溜息をつきつつ、真珠の手を引いて歩き出した。

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