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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第9章 レギュラー



カーテンコールに拍手をし、ゆっくりと灯っていく照明に少し瞬きをする。

さっきまで手を握っていた真珠は、拍手をしながら、ほう、とどこか恍惚とした表情。
その横顔に、ドキリ、と胸が跳ねる。

「すごかった」

そう呟いた真珠。

「舞台って、こんなに、こう、音楽や言葉が身体にドンッとくるんだねっ
 映画とはまた違う...本当に、『生きてる』っていう...
 そこにそのキャラクターがそのまま実在するみたいでしたっ
 感動じゃなくて、いや、感動もするんですけどっ
 なんていうか...ああー、語彙力無くて申し訳ないっ」

困りましたぁ、と興奮気味な様子に、侑士の表情が和らぐ。

「映画ばかりでしたけど、舞台もハマっちゃいそうです」
ギュッ、と繋いでいた手を両手で握る真珠。
「侑士くんに出会って、新しい扉、開けそうですっ」

(っ可愛え)

アカンっ!と吸い寄せられそうになった顔を逸らす。

「侑士くん?」
真珠に呼ばれ、咳払いして向かい合う。

「そないに喜んでくれたなら、誘ったかい、あったわ」
「あの、侑士くんが嫌じゃなかったら、また、一緒に舞台、見たいです」
いい?と見上げる瞳。
「観劇デート、したい、です」
「...罪作りな奴っちゃなぁ」
ううっ、と顔を反らしつつも真珠の頭を撫でる。

「マコトの癖、一つ見つけたわ」
「え?」
サラッとした感触の髪に指を通す。
「興奮したり緊張したりすると、敬語になるな」
しばらくきょとんとしていた顔が、ボッ、と赤くなる。

「み、見ないでっください」
顔を逸らす真珠。
「ほら、敬語なってるやん」
やっぱりそうやん、と顔を隠そうとした手を掴む。

「見ないでぇ」
「いやや、かわええから見る」
「と、年上をっからかうんじゃありませんっ」
「こないな時だけ年上モードかいな」
それもかわええよ、と真っ直ぐに目を見つめて言われた真珠は、より、顔を赤くした。

「ゆぅ、い、じわる、しないでっ」

ふぇえ、と泣き出してしまった真珠に、ドクリ、と心臓が跳ね上がった。

「す、すまんっ。かわええから、つい...からかいすぎだわ」
許してや、と肩を抱き寄せる。

(真珠に泣かれるん、弱いかもしれん...)

それに、と胸を顔を埋めて啜り泣く真珠の背を撫でる。

(変な気ぃ起こすところやった)

それだけはアカン、と大切だと想っている彼女を慰め続けた。
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