She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第2章 それが始まり
氷帝学園高等部。
金曜日の放課後。
部活終わりの学生が多方面に次々と散らばっていく。
「マ◯ク行かねぇ?」
「えー、俺、サ◯ゼがいい」
そんな話をしながら帰路につく。
「俺はパス」
いつもよりも手前で曲がる。
「侑士、帰らねぇの?」
岳人に映画行く、と手を振る。
「見たい映画の上映期間、終わりそうやねん。
オカンおらんから、夕飯済ませて帰ろか思っててん」
好きだねぇ、と言われながら別れ、バス停でスクールバッグからブックカバーをつけた文庫本を取り出す。
いつも通学で使う路線とは違う行き先のバスの終点。
映画館が入ったショッピングモール前で降り、奥の映画館を目指す。
人の少ないロビーでお目当ての映画のチケットを買う。
学割を選んで発券機でチケットを買うと、あ、と言う隣の声に振り向いた。
発券機の前で、うーん、と悩んでいる横顔に見覚えがある。
「マコっさん?」
口からまろびでた声に、しまった、と鼓動が早くなる。
「あれ?侑士くん?」
こんばんは、と微笑む彼女に、こんばんは、と会釈。
操作を急かす発券機に、彼女は、えっと、と悩んで続きの操作をした。
「侑士くんも?」
手元のチケットを指され、うん、と頷く。
「なにを見ますか?」
これ、と開場時間が迫っているチケットを見せる。
発券されたチケットに、あ、と零した。
彼女の手元のチケットには、自分が持つチケットと同じタイトル、同じ上演時間、同じ座席列、連番の座席番号。
隣り合う席を選んだ二人は、顔を見合わせた。
「すみませんっ発券しなおしますっ」
なぜか謝る彼女に、なんで?と考えるより先に口に出た。
「ええやん。せっかくやし、一緒に見ようや」
でも、と言った彼女。
「俺、おったら、嫌?」
「そ、そんな事ありません」
違う!と首を横に振る。
「あの、私、映画好きでよく来るんですが、その、こういうタイプの、絶対泣いてしまう、から...」
隣で騒がしいかもしれません、と俯く。
「ええやん。俺も泣くかもしれんし」
「う、うるさかったらごめんなさい」
申し訳なさそうに言う彼女と、指定のスクリーンに向かう。
「なにか買う派ですか?」
途中の売店を指さしたマコト。
「お姉さんが、奢りますよ?」
いたずらっぽく笑った彼女に、ふは、と笑って、一緒に売店のカウンターに並んだ。
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