She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第8章 一人目の男
立てるか?と手を引かれる。
「ガクトも来てや」
ガクト、という名前に、男の子だ、と熱くなる顔を俯く。
大丈夫?と気にかけてくれる彼に、コクコクと頷くしかできないまま、侑士が向かったのは駅前広場の脇のベンチ。
俯いたまま腰掛けると、使いや、といつかのように差し出されるハンカチ。
「侑士、紳士ぃ」
「韻を踏むな。
ゆっくりでええで。落ち着くまで、待つさかい」
優しく背中を撫でてくれる手に申し訳なさが勝る。
恐る恐る顔を上げると、優しい瞳で、なにがあったんや?と柔らかい侑士の声。
「ごめんなさい」
「謝られても、わからへん」
うん、と頷いて、隣で待ってくれている向日に向く。
「ガクト、君?」
「そうだよ!向日 岳人っての!
マコトちゃんだっけ?大丈夫?」
目、真っ赤だよ?と心配してくれる様子に、本当にごめんなさい、と謝る。
「あの、えっと、その
私...向日君の事を、女の子だと...勘違いして...」
「「...え?」」
揃った2人の声に、再び謝る。
「仲良さそうで、声、掛けられなくて...」
顔を見合わせた侑士と向日。
顔を逸らして肩を震わせる侑士に、笑うなしっ!と向日は掴みかかる。
「笑わんとおれるかいなっ!
マコト、岳人が女ん子に見えたんか?」
こくん、と頷いた真珠に、侑士は一層笑い声をあげた。
「っあー、うん。
やっぱ、マコトは最高やな」
掴みかかってきた向日を躱す。
「岳人は、男やで。
向日 岳人。俺のダブルスのパートナーねん」
「あっ、【パートナー】ってそういう...」
「ああ、それで勘違いしたんか?」
「てっきり、そういうパートナーって事かと」
「『そういうパートナー』は、俺にはマコトしかおらへんよ」
安心しい、と目線を合わせるためにしゃがんだ侑士の肩に顎を乗せた岳人。
「紹介してみそ?」
ニヤニヤしている岳人に、侑士は、パートナーや言うたやん、と返す。
「パートナーってやっぱ、そういうパートナー?
彼女ってこと?」
せやで、と肯定した侑士に慌てて立ち上がる。
「前程はっ失礼しましたっ
あの、その、あまりの可愛らしさに、女の子だと勘違いしてしまって...
改めまして、調月 真珠と申します
お見知り置き、くださいませっ」
捲し立てるように言って頭を下げた真珠に、再び侑士と岳人は噴き出した。
