She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第8章 一人目の男
ゆうちゃんなら、出かけてるよ
訪れたダブルスパートナー宅にいた顔見知りの姉御に言われ、休日で混み合う駅ビルの雑踏に入る。
「この辺りにいると思うんだけどなぁ」
映画館も劇場も近い駅。
休日の人混み。
この中から見つけるのは難しいかなぁ、とベンチの方に人波を避けようと近づいたら、目的の人がいた。
(ラッキー)
さすがダブルスパートナー!と意気揚々と近づいた。
「『げ』ってなんだよっ!すっげー失礼だしっ」
その上、ストーカー扱いされて、より失礼なやつだっ!と憤慨する。
今日は堪忍してや、と言う侑士。
舞台終わりに構ってもらおうとお願いしたが、予定がある、と断られる。
だいたい、一人行動が多いのに、珍しく同行者がいるらしい。
察せ、と言う侑士。
(変な侑士だな。いつもなら相手してくれんのに)
まさか女の子とデートじゃあるまいし、と見上げた。
「デートなんや」
そういった言葉に、一瞬頭がフリーズする。
(デー、ト...デート?え?)
「はっ!?ゆーしがデートっ!?」
咄嗟に出た声に、声、デカい、と顔を顰められたがそれどころじゃない。
「相手はっ!?」
近くにいる様子がないお相手に、あたりを見回す。
落ち着きや、と言う侑士。
まだ来てないのかな?と見ていると、俯いている女の子に目が止まった。
膝の上でバッグを握りしめている彼女の拳が濡れた。
(泣いてる?)
小さな嗚咽が聞こえ、侑士をそっちのけにして声を掛けた。
「泣いてんの?大丈夫?」
驚いたように顔を上げた彼女からは、お、んなの、こ?と言う言葉。
「俺、男だよ?」
ですね、と返ってきた涙声。
すげぇ泣いてる、と輪郭に溜まっていく雫を拭おうとした時、侑士が声をかけてきた。
あ、と声を漏らした彼女が泣いていることに驚いたのか、珍しい表情。
この子、泣いてんだ、と言うより早く侑士は立ち上がって、その子の前にしゃがんだ。
問い詰める侑士に、彼女は首を横に振るだけ。
知り合いか?と見た侑士が彼女の手を握るので、(あ、この子が)と、しばらく二人を観察していた。
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