She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第6章 姉とカノジョ。
「別れたないよ」
侑士くん?という真珠の声が、外の雨にさえかき消されそうに聞こえた。
「好きやって、言ってくれたやん」
嘘やった?と真珠を見る。
「親友やって、言ってたやん」
それなのに、と考える頭も熱い。
「『かっこいい』言うたん、そんなつもりやかったん?」
待って、と言う真珠を遮って続ける。
「やっぱり、諦められへんの?」
「え?諦める?」
やって、と恐る恐る見た真珠は、首を傾げて瞬いていた。
「えっと、私は今でも侑士君のこと、かっこいいと思ってるし、好きだよ?
恵里奈の事も、親友だと思ってる、けど...?」
なんか噛み合ってないかも?と言う真珠に、やって、と椅子に座り込む。
「姉ちゃんとおった、人」
「恵里奈と?」
誰だろ?と考えた真珠は、ああ!と頷く。
「大沢さん?今日、恵里奈と泉深に来てたよ」
「お、オオサワはん?」
「あれ?知らない?
恵里奈と同じ大学の法学部の」
インカレでうちの大学に来てたはずだけど、と言う真珠。
「『一目惚れした』て」
「うん、侑士くんにね。
え、で、なんで大沢さんが出てきたの?」
沸騰しそうに熱かった思考が冷えていく。
「えと、そん人が気になっとるなぁ、とかそういう」
「え?恵里奈が?
ああ、よく声かけてるなぁ、とは思ってたけど、まあ、同じ大学の人だし」
そうなのかも?と言う真珠に、そうやなくて、と聞く。
「マ、コトが好きなんって...?」
うん、と頷いた真珠。
「侑士君だよ?」
改めて本人に言うと恥ずかしいね、と笑う。
はぁぁあ、と俯いた侑士。
「どうしたの?」
大丈夫?と言う真珠は、え?と何かに気付く。
「もしかして、『一目惚れだった』ていうの、大沢さんのことかと思ったの!?」
「どう考えてもそうやろっ!
あの話の流れやったら!」
恥ずかしっ!とブレザーで顔を隠す侑士。
「な、なしてそんな話...」
ちら、と見た真珠もなぜか恥ずかしそうにしている。
「えっと、侑士君が、すごくこう...あの『好き』って感じの事をたくさんしてくれる、ので...何か、不安にさせているのか、と
それで、侑士君のこと、好きだよってことを伝えようとしたら...『別れたない』とか言うから、あれぇ?なんて」
すれ違い続けていたこれまでの会話に気付いた2人は、また違う勘違いに黙り込んだ。
