She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第6章 姉とカノジョ。
並んで傘を差して門をくぐる。
「あ、これ、返さんと」
入る時に借りた入校証。
「返してくるわ」
待っとき、と警備室に走る。
入る時に書いた紙に出た時間を書き、入校証とともに返す。
「『お迎え』でも入れるからね」
受け取った警備員に、え、と固まる。
指さされた用紙の「入校目的」の欄。
丸をつけた「校内施設の利用」の下に、「学生の送迎」という項目。
「家族じゃなくても、入れるから」
結構多いよ恋人くんの送迎は、と言うと、返した入校証をしまう。
お礼を言って少し先で待つ真珠の方へ向かう。
(おっちゃんには、ちゃんと彼氏に見えたんかな)
その事に少し、喜んでいる自分がいて、終わった?と聞く真珠を見つめる。
「どうしたの?」
折りたたみの傘を差す真珠を、自分が差すビニール傘の下に入れる。
「貸しや」
真珠の手から傘を取ってたたみ、バサ、と水滴を振り払って鞄のビニール袋に入れ込む。
傘、という真珠の手を取り、行くで、と手を取って歩き出した。
とと、と数歩、真珠が早足になったのに気づき、少しゆっくりと歩く。
「そういえば、姉ちゃんと仲直りしてくれたんやね」
喧嘩してたわけじゃないよ、と言う真珠。
「その事で、ちょっと話してもいい?」
「ええけど、」
どこか、何かを決心したような顔の真珠。
あ、と少し先に見えたオープンカフェを指さす。
「入って良い?」
ええよ、とあまり人がいない店内に入った。
✜
「白状するね」
仰々しい真珠の言葉に、ん?と眼鏡を上げる。
「実は、恵里奈が引き合わせようとしてくれたの」
「え?」
どういうこと?と見た真珠の顔に、瞬く。
「はっきり言わなくて、ごめんなさい」
謝られる理由が分からず、なにが、と戸惑う。
「一目惚れだったの」
真珠の言葉に固まる。
(一目、惚れ...?)
なぜか、その言葉に頭に浮かんだのは、姉といた男性。
「はじめは『かっこいい人だな』ってそれだけ」
アイスコーヒーを飲んだはずなのに、腹の底が熱くなった。
「何度か近くで会うようになって。
少し、話もしてくれるようになって」
カラン、と氷が崩れ落ちる音が、やけに大きく聞こえた。
「でも、恵里奈とは、」
続く真珠の言葉の先を拒絶するように、待って、と立ち上がった。
✜