She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第47章 元カノ〜邂逅〜
すんません、という声に、はいっ!と慌てて、会計処で待つ人影にレジへと向かった。
カウンターに置かれた伝票を手に取り、レジを打つ。
「バイトしとるん?」
「いや、親がやってる店、だから」
ん、と後方の壁に張られた、父の名前の食品衛生管理者の紙を指す。
「知らんかったわ」
「言ってなかったかな?」
「どうやろ?覚えてへんわ」
「1,000円です」
お願いします、と彼が開いた財布は、記憶のものとは違っている。
「レシートご入用ですか?」
「いや、いらへんよ」
「ありがとうございましたー」
レジスターに1,000円札をしまうと、通学鞄に財布をしまう彼の向こうに、無人の席に困惑している彼女を見つける。
「彼女さん、戸惑ってるよ」
「え?」
ん、と視線で2人が座っていた席を指す。
「マコトっこっちや」
そう言った彼の肩には、氷帝の通学鞄とテニスラケットバッグ。
そして、明らかに女性もののトートバッグ。
「払うのにっ」
「ええよ、こん前、マコトが払ろうとったやん」
「でも、ゆう、高校生やし...」
「それ、言わん約束やろ」
あ、と黙り込んだ人は、小柄だったが、大学生もしくはOLかという雰囲気。
「行くで」
ごちそうさまでした、とチラッとだけそちらを見て、すぐそこの扉を開ける。
「ごちそうさまでしたっ
ありがとうございました」
律儀に頭を下げると、扉を押さえて待つ忍足にありがとう、と声を掛けて、店の先で扉を持って待っている。
「ん、」
「ありがとう」
彼女に鞄を渡すと、手を繋ぐ2人が閉まった扉に消える。
店の窓越しに、寄り添って帰っていく2人が見えた。
「忍足、あんなに分かりやすい奴だったんだ」
きっと、下校中に見ていた携帯に連絡を入れてのは彼女だったんだろうな、と2人が座っていた席の片付けに向かった。
2つのカップはテーブルの手前側に。
少し水が残っているお冷やのグラスに水滴は無く、机にも残っていなかった。
それらを拭いたであろう紙ナプキンとおしぼりの袋は小さくソーサーの脇に。
2つのグラスと2つのカップ、ざっくりと畳まれた使用済みのおしぼり2枚を片付けたテーブルには、何の面影も残ってはいなかった。
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