She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第47章 元カノ〜邂逅〜
「オマタセシマシタ、紅茶ストレートです」
ソーサーに乗ったティーカップを置き、角砂糖のポットを取り替えて、伝票に追記をする。
それを伏せて卓の端に置くと、ごゆっくりどうぞ、と少し早足に離れる。
(やばっ!なんで緊張してんの?)
レジカウンターに戻り、そっと席の方を見る。
彼が通学鞄から出した本に挟まれていたものに、あれは、と気づく。
そうだ。
彼女が使っているブックマーカーは、彼の下駄箱に置いたそれと同じもの。
(「大事な物」って、そういうこと)
校内を駆け回って捜していたのは、恋人とお揃いにしていたからだったのか、と今更知る。
彼と付き合っていた時。
雑貨屋で買える安いペアのストラップやキーホルダーを彼氏とお揃いにしている友人が羨ましく、彼が当時つけていたストラップの事を聞いた。
これか?
大阪からこっち来る時、いとこがくれてん
いっつもよぉわからん変なん持っとるやつなんや
そいつらしいっちゅうか
その後、機種を変えてもストラップはつけていた。
他に何かないかと、当時、彼が使っていたシャープペンシルと同じものを勝手に買った。
(そう言えば、あれ、どこやったっけ?)
彼のイメージにぴったりだったスカイブルーのペンシル。
同じ色を買うか悩みに悩んで、結局買ったのは色違いのレモンイエロー。
テスト前になると、一緒に勉強をしてくれた彼がそれに気づいて「仁井村ちゃんらし色やね」と言ったのを今でも覚えている。
ああ、思い出した。
付き合い始めて舞い上がった私は、「忍足君」と呼んでいたのをすぐに「侑士くん」と呼ぶようになった。
クラスメイトなどの女の子はみんな名字にちゃん付けの彼は、「名前で呼んでほしい」と言うと「サオリ、ちゃん?」と少し戸惑ったように呼んだ。
それから、2人の時は「サオリちゃん」と呼んでくれたけれど、何度か言っても「女ん子呼び捨てにするん、なんや苦手なんや」と言っていたのを、思い出した。
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