She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第47章 元カノ〜邂逅〜
「部活は?」
「今日、休みや」
やから放課後に時間とったんや、という忍足と昇降口で下足に履き替える。
「自主練とかしないの?」
「するときもあるけど、体休めるんも大事や」
「えー、スポーツマンっぽいこと言う〜」
「スポーツしとるもん」
ははっ、と笑った忍足。
「忍足、電車だっけ?」
「や、バスや」
「電車じゃなかった?
中等部の時は、電車だったよね?」
「朝練の時間変わって、バスの方が都合ええねん」
「あ、ダイヤ改正あったしね」
ん、と頷く彼と正門へ向かう。
「自分もバスやったね」
「乗り続けて早10年目ですよ」
「初等部から氷帝なん?」
「幼稚舎からだよ」
幼稚舎は専用の送迎バスあるけど、と、歩く歩調に無理がないことに気づき、ふと、隣を見上げる。
「跡部とか、ジローや宍戸とおんなじなんや」
「中等部まではずっと氷帝って方が多いんじゃない?
忍足みたいに、中学受験で入ってくる方がうちでは少数派」
そらそうか、と隣を歩いていた忍足が、制服から携帯を取り出す。
「自分、一人で大丈夫か?」
「え?」
交差点の赤信号に立ち止まった時、そういった忍足を見上げる。
「大丈夫、ってもうバス停すぐそこだけど」
「せやけど」
「あ、なんか用事あった?
いいよ、気にしないで」
「時間、遅なっとるから、気ぃつけや」
再び携帯を気にした忍足。
「寄るとこあったの?
ごめんね、なんか流れてここまで来ちゃった」
「いや、方角はこっちやからええんよ
ほな、気ぃつけや」
また明日、と手を挙げた彼に、うん、と手を振る。
左右を確認して、タッと走っていく背中。
横断歩道を渡り切ると、通りの向こう側を歩き出す。
同じ方角なので、追いかけるように車道を挟んで歩くと、彼は歩きながらラケットバッグを肩から降ろして手に下げ、結っている髪を解いた。
ラケットバッグを肩にかけ直すと、ブレザーのポケットに何かをしまい込む。
初夏をはらむ風に揺れる髪をかき上げながら携帯を見ると、タッ、と駆け出していった。
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