She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第47章 元カノ〜邂逅〜
「ねえ、この際だから聞いていい?」
「なにをや?」
度重なるハプニングにも、淡々と委員としての業務をこなしている目の前の元彼は、やる気のないもう一人の委員に愛想を尽かせ、勝手に一人で考えた交流計画を見ている。
「なんで私なんかと付き合ったの?」
手を止めた忍足は、少し考えて、なあ、とこちらを見た。
「『私なんかと』ってなん?」
「え、と?」
太腿に立てたタブレットを支えにしてこちらを見る視線に俯く。
「だってさ、私、別に特別可愛くないし、美人でもないし。
忍足みたいになんかすごいもの持ってないし」
「ほんなら、逆に聞いてええ?
なして俺なんかに告白したん?」
「そ、れは、」
なんでだっけ、とあの頃を思い出す。
「かっこいいな、て、思った」
「そら、おおきに」
特に照れるような様子も無い忍足に、ハッとする。
「答えてよっ」
誤魔化したつもりだったの!?と詰め寄ると、いやあ、と苦笑いする忍足。
「んー、まあ、告白されたん嬉しかったから、やろか」
「やっぱり、好きだったわけじゃなかったんだね」
「っちゃうてっ!
す、好きやった、と、思うで?あの時は...」
煮えきらない態度に、いいけど、と笑う。
「ねえ、今の彼女さんは、告ったの?告られたの?」
「女ん子は好きやなぁ、その手の話」
青春やねぇ、とその青春の当事者のくせに傍観者の反応。
「どうなの?」
「告白、したんや」
「忍足が告ってオッケーもらったんだ」
せやで、と恥ずかしそうに視線が泳いでいる。
うん、と自分で納得する。
「あの頃は、恋に恋してたって感じ?」
「どっかで聞いたセリフやなぁ」
「あの頃の忍足はさ、私が好きだったとかじゃなくて『恋に興味があった』んじゃない?
そこに私がタイミングよく告白したから付き合ってみたとみる」
「...かなわんなぁ、その竹割ったような性格」
そう?と机に肘をついた。
「彼女さんのこと、好き?」
「当たり前やんか。
なあ、ここんとこのことなんやけど」
彼が指すタブレットを覗き込み、どこ〜?と聞く。
「この企画、こんまま引っ張り込んでええ?」
「纏まるなら、いいんじゃない?」
「俺が立て直すわ。
できたら、そっち送るから確認して」
わかった、と見上げた、あの頃より少し大人びた横顔は、窓からの夕日に、オレンジ色に染められていた。
✜
