She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第47章 元カノ〜邂逅〜
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学校支給のタブレットで、当日の校外活動の詳細なタイムスケジュールを意味もなくスクロールする。
海外交流授業も佳境となる頃。
同じクラスの委員・末浦 このみは突如、退学した。
個人情報なので教えられない、と顧問に告げられた侑士は「納得できない」と生徒会長の跡部に理由を直に聞いたが、家庭の都合、と教員と全く同じ答えだった。
が、末浦が登校しなくなってしばらく経った頃。
「ゆうちゃん、娘さんが同級生じゃなかった?」と母が見せてきたのは地方広報誌。
「都議会議員 末浦 靖之助 氏 逝去」の見出しに、記事へ目を通した。
政治家のスキャンダルはマスコミの大好物だ。
30年以上前の恋人とのイザコザを掘り返された末浦氏だったが、記事の内容に、侑士は(あーあ)と思うしかなかった。
妻と娘に残した謝罪の遺書まで公開されてしまっては、もう、この街には住めないことは容易に想像がつく。
末浦邸は早々に売りに出され、彼女と親しかったクラスメイトも、連絡が途絶えたと聞いた。
立ち寄ったコンビニに置かれていた週刊誌。
いつもなら何の気にも留めないが、『末浦氏 愛憎が拗れた末の心中か』の見出しに、「忍足〜」と語尾を間延びさせて話す彼女の癖が一瞬、頭をよぎり去った。
海外交流委員が1人になった理Gクラス。
来校予定の留学生が不在となった文B。
これまでのコンタクトもあるため、校内交流は理G、つまり侑士が、校外交流を仁井村が在籍する文Bが受け持つことになった。
文Bのもう一人の海外交流委員・竹原 海里は、所属するサッカー部の新人戦に向けて、最初から委員活動には消極的で、今回の件で海外交流授業は完全に「無関心」へと追いやられているようだった。
「任せっから!」の一言で自身の資料を丸ごと侑士へ押し付けるように手渡すという「情報共有」をしただけで、打ち合わせに顔も出さなくなった。
「忍足は優しすぎるんだよ」
「え?
はあ、一応、褒め言葉として受け取っとくわ」
どうも、と曖昧に返すと、ほら、と仁井村は笑った。
「『気まずいけどしゃーない。無難にやり過ごさんと』って心情、丸わかり」
言い当てられた侑士の泳いだ目に、変わったね、忍足。と仁井村は笑った。