She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第46章 宣戦布告っ!...か?
(どないしよ、どないしよ、どないしよっ...!)
勢いに任せて、侑士の父に楯突いてしまった。
(結婚どころかお付き合えさえジ・エンドやん)
やってしまった、と料亭を抜け出した足が早足になる。
(え、調月の家に迷惑かけたりしたら...
と、取引先減ったりしたらどないしよう...
鳳壱おじさんやセナ...父の酒造場、大丈夫やか...?
いや、もしも、こう、何か権力的なもんと繋がりを持ってはるとしたら...はっ、跡部さんっ!跡部さん、ゆうと仲ええよね?
同じ氷帝のテニス部やし...
『跡部財閥』敵に回したら、どうなるんや)
カツカツとなるヒールの音が急に恐ろしくなった。
(...こないな形で、終わってまうんかな)
立ち止まり、鞄から本を取り出す。
パラ、と捲った中のブックマーカーは、侑士とお揃いにしている。
天秤座を記したそれを手に、呆然と立ち竦む。
よくよく考えれば、とようやく深く息を吐く。
(恵里奈が、言ってたな。
ご両親は、お見合いだったって...
うちなんて、古いだけの酒蔵だし、私が何かゆうに、忍足家に貢献できることなんて無いし...
そもそも、私に何の権限もない...)
私、もらってばかりだ、と俯く。
(私、ゆうに何かできる...?)
忍足家はいつも綺麗で、和美も、いつもきちんと化粧をして整えている。
いつ行ってもキッチンに洗い物が溜まっていることも、洗濯物が干しっぱなしになっていることもない。
侑士の部屋は、本やレコードこそ多いが、きちんと整理整頓していて、あの真っ白なブレザーにシミ一つ付いていることを見たことがない。
完璧とも見える環境にいる侑士に、果たして自分は必要なのか、と自問する。
(自信、無くすなぁ)
元々無いそれが、ため息とともに自身から消化されて行く気がした。
「マコトっ!」
ビクッ!と肩が跳ね上がる。
「追いついたわ」
よかった、と笑う侑士は、走ったのか、結った髪が乱れ、つう、と輪郭から首へと汗が流れた。
俯く真珠の正面に立つと、堪忍ね、と頭に乗せられた掌が熱い。
「もう、オトンには、会わんとって」
え?と顔を跳ね上げる。
「俺が守りたいんは、真珠だけやから」
優しく、その腕の中に包まれた。
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