She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第46章 宣戦布告っ!...か?
「ゆうはっ、ずっと悩んでましたっ!大切な先のことを、感情に任せて決めてしまいそうになるほどにっ」
マコト、と言う侑士を恵里奈が止めた。
「それなりのお立場があり、継ぎゆくものがある方の、それを守るために、お父様はご子息の侑士さんを『利用』されようとしてるんですか?」
「...ずいぶんなことを言いはるね」
「これまでの話、それ以外の何がございましょうか」
噛み締める唇と握り込んだ拳を震わせる真珠。
「互いに利害が一致するんやないか、と思っとるだけや。
侑士かて、ゆくゆくは医者んなる身...」
「では、お父様は、利害の一致でご結婚されたのですか」
「それは」
「瑛士さん」
止めたのは、和美だった。
「今回のこと、侑士の先々に役立てば、というお話でしたよね?」
和美の言葉に、そう、やなと瑛士は頷いた。
「侑士の将来に、瑛士さんの人脈や立場が役立つことになれば、と。
テレーゼさんのこと、侑士が承諾するなら、私はそれでいいと思っていました。
これまで、子どもとは言え散々振り回してきましたから、私や瑛士さんがいなくなってからの事まで口を出すつもりはありませんでした。
親は、ある程度は、子に道を示してやるものです。
瑛士さん、あなたはそれを親の責任として示したつもりでしょうけれど、それは道を示したのではなく、『その道しかない』と誘導していますよ」
和美は少し置いて、鋭く瑛士を見た。
「私たち、被害の一致で結婚したんでしたっけ?」
黙り込んだ瑛士に、すみません、と真珠は頭を垂れた。
「身の程を弁えず、わかったような口をきいてしまいました」
座布団から降りて一礼し、すく、と立ち上がる。
「家族団欒を壊してしまい、申し訳ありませんでした」
失礼します、と座敷を出ていく真珠に、何も言わず侑士が立ち上がった。
「オトンこと、尊敬はしとるよ。
親としても、大人としても、医者としても。
...前にも言うたけど、医者なるためだけに氷帝行ったんとちゃうし、人選んどるんともちゃうよ。
俺の人生の権限は俺しか持たへん。
結婚せな、俺のいきたい道にいかれへん言うなら、俺は真珠と歩める道を選ぶ。
...『親子の縁切れ』言うなら、それでもええから」
静かに締められた襖。
残された和美と恵里奈の視線に、瑛士は、深く息を吐いて、目を閉じた。
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