She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第45章 『反抗期届』
(あまーい)
季節の水菓子に舌鼓をうつ。
さて、と向かいで湯呑みを置いた瑛士。
「二人のことを聞いてもええかな」
口を開いた侑士に、できれば真珠さんから、と瑛士が言う。
不服そうに果物を口に含んだ侑士に、黒文字を置く。
「そうやね、きっかけはなんやったん?」
はい、と一呼吸置いた真珠の声は落ち着いていた。
「まず、恵里奈さんとは、大学進学後も親しくしていただいております。
本当に、いつもお世話になっております」
ゆっくりと下げた頭を上げた真珠に、いいえ、と瑛士は笑った。
「互いに、それぞれの大学での新生活が始まってからも、合間を見ては恵里奈さんから声を掛けて頂き、時にはこちらからも声を掛けさせてもらい、交流がありました。
幾度か、ご自宅にもお邪魔させていただいております」
ゆったりと微笑んで構える瑛士に、少し、走り気味だった真珠の声が落ち着き出す。
「侑士さんのことは、恵里奈さんから時折聞いておりました。
氷帝学園の生徒さんで、幼い頃からテニスをされていると。
初めて侑士さんとお会いしたのは、今年の春でした。
後に、偶然、映画館でお会いして。
その時に、音楽やエンターテイメントの嗜好に通じるところがあると知り、ご迷惑をおかけしたにも関わらず、話を聞いてくださる侑士さんのお人柄が素敵で、すっかり夢中になっておりました」
黙って聞いていた侑士が、落ち着きなく、用が済んだ黒文字を弄くるので、トン、と恵里奈がその腕を突くと、やめや、と小声でそれを払う。
「それから少しして、交際を、と申し出ていただいた時には、二つ返事でよろしくお願いします、と答えさせていただきました」
「ゆうちゃんが、告白したんや」
へえ、と父に見られた侑士は、あかんの?と俯いて手先を見つめる。
「あかん、言うてへんやん」
黙り込む侑士を見た真珠は、それで、と背筋を伸ばした。
瑛士と和美を見た真珠。
「お二人から見れば、まだ日も浅く、若輩者であると自覚しております。
なにもかもが、侑士さんと初めてで、未熟ではありますが、彼のこれからの人生に寄り添って参りたいと考えております」
にこり、と微笑んだ真珠に、一心、驚いたような表情を見せた侑士がゆっくりと頷いた。
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