She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第45章 『反抗期届』
「あつーい!」
講義室の席で、フレアスカートの中にハンディファンを突っ込む同期に、こらこら、と苦笑いする。
「乙女、お里が知れてよ」
「大丈夫!もう『乙女』じゃないっ!」
「なんのカミングアウトよ」
本当に、と逆側からの声に頷く。
「ねーねー!夏休み、海、行こうよっ!」
「えー、暑いじゃん。
川とかにしようよ」
「だめっ!
こんがりイケメンつかまえるんだからっ!
勝負水着も買ったのー!
あとはメンツと日にちだけなの〜」
「ごめん、『こんがりイケメン』に気を取られた。
後半なんて?」
「だからっ水着買ったのっ!だから海、行こっ!?」
「行くなら盆前にしとけぇ
幽霊に引きずり込まれるから」
「そうなのっ!?」
「あれって、クラゲが出るから危ないよっていうのを、引きずり込まれるぞー、って子どもたちに怖がらせるための話でしょう?」
「さすが図書館員」
えっへん!と言った真珠。
「じゅじゅはー?
彼氏とラブラブしないのー?」
「んー、部活忙しそうだし...
お盆は大阪帰るだろうし、どうだろうね?」
「イマドキの高校生、忙しいもんねぇ」
イマドキって、と笑う。
「彼氏、地元大阪だっけ?」
「生まれはね。
いとことおばあちゃんは、大阪にいるみたい」
「じゅじゅ、おばあちゃんち京都だよね?
近いじゃん」
「『プレハネムーン』しないの?」
なにそれ、と聞き返す。
「上京組で地元近い同士が『大学のゼミと日程合わない』とか親に言っといて、行き帰りの飛行機とか新幹線、カレカノと一緒の便にして、プチ旅行気分するやつ。
あくまで『帰省』だから、旅費は親が出してくれるだろうし、家族と密閉空間で2〜3時間過ごすくらいなら、恋人と過ごしたいじゃん?
地元、大阪と京都で近いし、じゅじゅ、できんじゃない?」
「なるほどねぇ。
あ、そう言えば夏休みにお父さんに会うんだった」
何着ていこう、と考える真珠。
「早々に親とご対面?」
「お母さんには会ってるよ。
ゆうの夏休み、じゃないや、前期長期休業期間のインターハイに合わせて一時帰国するから、その時にって話してるの」
「長ったらしい名前だね」
「微妙に休みがズレるんだよねぇ」
でもね!とパァ、と明るい表情で、真珠は携帯を示した。