She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第44章 外野の暗闘
「あら、越知君。久しぶりね」
「...花開院か、久しいな」
氷帝学園高等部の同級生であった2人は、淡々と会話を交わす。
「彼女と、話がしたいんだが」
「私?」
越知に指名され、なんでしょう?と首を傾げる真珠。
「忍足とは、長いのか?」
越知の質問に、ギョッ、とした顔をした向日。
「え?
そう、ですね、出会ったのは春なので、そう長くはないかと」
「忍足の、なにに惹かれた?」
「んー、そうですね...
かわいらしいところ、でしょうか」
2人の会話を聞く花開院を、向日は恐る恐る見た。
「きっかけはなんだ?」
「私、以前学習塾に通っていて。
そこで親しくしてもらったのが彼のお姉さんで...」
「忍足の姉の紹介、ということか?」
「紹介、ではないんですけれど...偶然、見かけて」
2人の会話を傍で、静かに聞いていた花開院が口を開いた。
「家族ぐるみの仲で?」
「そう、ですね」
「貴女の両親は、彼のこと、知ってるの?」
「え?は、はい。
幾度か食事も...」
「彼の両親は?」
「和美さ、あっお母様、にはいつもよくして頂いてますよ。
お父様にも、今度、帰国された時にお目通し頂ける機会を、と彼を通して約束頂いていて」
そう、と、花開院は言って、それじゃ、と手を上げて踵を返して行った。
しばらく考えて、真珠を見た越知。
「少し、出会いの機会が遅すぎたようだな」
「え?」
「...こちらの話だ。
『手放すのなら早めに』と忍足に、伝えてくれ」
「はい?あっ」
歩き出した越知に、てばなす...?て、にす...?とうまく聞き取れずに首を傾げる真珠。
一連の流れを見ていた向日は、事が荒立つ前に終わったのか...?と腕を組んだ。
「なんだったんだろ?あっ」
ゆう、決めた、とコートを見る真珠。
汗を拭い、髪を結い直している侑士。
コートのすぐ近くに花開院の姿があったが、侑士を一瞥しただけで、屋内コートから出て行った。
「つきさーん!」
斜向かいのギャラリーから、越知を呼ぶ声がしたが、真珠は気にも止めず、コートチェンジした先で靴紐を結び直す侑士を見ていた。
(なんだっけ?
当事者は分かってなくて、周りだけが騒いでるやつ)
灯台下暗し?と、真珠に気付いて微笑む侑士に、向日は、ふん、と鼻から短い空気を吐いた。
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