She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第44章 外野の暗闘
「もしかして、あなたが『忍足 侑士』くん?」
はい、と真っ白のブレザーが目を引く制服の彼女を見上げる。
「私は、花開院 魅愛」
微笑んだ彼女に、(カケーイン...仰々しい名前やなぁ)と訝しい目で見る。
「ふふ、そんな目で見ないで。
安心して。生徒会の役員なの」
生徒会、と脳内で反復して、せや!と立ち上がる。
「お母様が探されてるわ。
案内するからついてきてくれる?」
こっちよ、と微笑む彼女についていく。
「学園の敷地は広大だから、迷うのも無理ないわ」
慰めのような言葉に、はあ、と曖昧に返す。
見たような気もする校舎の角を曲がると、講堂が見えた。
「やあっと戻ってきたわぁ」
俺、どこ向かっとったんやろ?と言う考えは、隣の存在に打ち消えた。
「すんませんでした。ご迷惑お掛けしてもうて」
「これも、生徒会役員の仕事だから。
何か困ったことがあったら、いつでも言って。
と言っても、私は高等部の学生なのだけど」
「ほんなら、3月に中学、卒業しはったんですか?」
「ええ、氷帝学園の中等部を」
「なんや、残念やんなぁ。
せっかく美人はんと仲良ぉなれそうやったんに」
幼い頃から周囲の環境が変わりやすかった侑士は、同級生よりも年上とのやり取りのほうが気が楽だ、と感じていた。
じっ、とそう背の高くない彼女が見上げてくる目線。
「テニス、するの?」
それ、と指さされた背中のラケットバッグ。
「そぉです」
「部活はテニス部希望?」
一応、と頷いた侑士。
「私も、ほんの少しだけれど、テニスの経験があるの。
今年度の部活が始まったら、男子テニス部、見学させてもらうわ」
なんと答えたらいいのかわからないでいると、ゆうちゃん!と母の声にギクッとする。
「それじゃ、氷帝学園を楽しんで。『ゆうちゃん』」
またどこかで、と人混みに消えていった背中。
「どちらさん?」
「去年まで生徒会役員しとった先輩やって。
それよりっ『ゆうちゃん』やめてやっ!ほんまに恥ずかしい」
「それよりほらっ制服!」
採寸の時間、終わっちゃう!と背中を押され、行列の最後尾に並ばされた。
✳