She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第43章 花に蝶
「そら、エネルギー足らんようなるわ」
宍戸が開いた弁当箱はみっちりと詰まっていて、アホ、と侑士は溜息をつく。
「寝で食忘れるってどうなってんだ」
心底理解が出来ない、という顔の宍戸。
「ジロくーん、ご飯食べようかぁ?」
食えるか?と侑士が覗き込むクッタリとした芥川に、そうだ、と真珠は弁当を入れていた小型のクーラーバッグから小さなペッドボトルを取り出した。
冷たい、と確認して、天地を返すと紙コップ半分ほど注ぐ。
「ジロ君、コレ、飲めない?」
「なにー?」
うーん、と起き上がって恐る恐る口をつける芥川。
「めっちゃ甘E〜」
おいC〜!と飲み干す。
「これなに〜?ジュース?」
「ジュースっちゃジュースかな」
甘いからね、と芥川にタオルで風を送る真珠。
「甘酒や」
「えっ!?お酒なのっ!?」
飲んじゃったC〜!と空の紙コップに慌てる芥川に、大丈夫よ、と微笑む。
「『甘酒』とは言うけど、お酒じゃないの。
お米を麹菌でお酒のように発酵させて作るんだよ」
「アルコールは入ってへん。
具合悪い時に刺す点滴と成分近いさかい、疲労回復になるんやで」
「元はお米だし、消化にいいから手早くエネルギーとれるかな、と思って」
これおいC〜、とふにゃりとした笑顔の芥川に、よかった、と一安心する。
「食べられなさそうなら、これ飲んでおくだけで少しは違うと思うんだけど」
食べられるなら食べてほしい、ときちんと保冷剤も入れてあった弁当を見る。
「これ飲んだら、ちょっと食べるよ〜」
「ジロくんの次の試合って?」
トーナメント表を確認した侑士が、3つ後に5番コートやね、と答える。
「3つか...できるだけ早く食べないと、消化時間確保できなさそうだね」
5番コートで現在行われているゲームの進捗を確認し、芥川の弁当の内容確認する。
「ジロくん、あと一杯の甘酒と...
この肉野菜炒めだけでも食べられる?」
甘酒を炭水化物として、あとは野菜と少し塩分が取れれば、と真剣な顔つきで考える真珠。
「わかったよ〜」
「野菜とたんぱく質中心に、食べられるだけでいいから」
「ありがとー。マコトちゃん優C〜」
へらっ、と笑う芥川に、全力出せないと悔しいでしょう?と微笑み返した。
マコト、と呼ばれて振り返る。
「一杯、もろてええ?」
甘酒を指す侑士に、紙コップを差し出した。
