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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第43章 花に蝶



花開院 魅愛は、氷帝学園でも跡部に次ぐとされる、名家と呼ばれるに相応しい花開院家のお嬢様だ。
不動産業を主としたブルームフラワーハウジングの代表取締役 花開院 誠之介を祖父に持ち、学内では「女跡部」と裏で称されていた。

「気になるようね、ミア」
「カヅキ、」

彼女に声を掛けたのは、鷹司 華鶴葵。
国会議員・たかつかさ 葉月 を母に持ち、その祖父は元官僚。元衆議院議員の父 旧姓・江嶋 呼詩朗は、今は表舞台を退き、たかつかさ 葉月の秘書をしている。

ともに氷帝学園高等部を卒業したばかりの2人は、旧生徒会役員でもあった。

「夕菅の君に恋人ができたという噂は、本当みたいね」

華道の師範代でもある華鶴葵は、自身が想いを寄せる跡部を白金鳳花の君、幼馴染の親友・魅愛が想う侑士を夕菅の君と呼んだ。

「あなたのことは嫌いじゃないけど、そのセンスは苦手だわ」
うんざりしたような顔の魅愛。

「なんとでも。
 夕菅の君の恋人に間違いないそうよ、彼女」
「誰からそれを?」
「雪薔薇の君」

彼女が『雪薔薇の君』と称すのは、同級生の越知 月光。

「先日の校内選抜ではっきりと『身内だ』と、夕菅の彼が宣言し、彼女は『恋人の試合を見に来た』と言ったそうよ」
「誰なの?」
「そこまでは」

手持ちの扇子を開いて口元を隠した彼女に、指に挟んだ1枚の紙を差し出す。
なぁにぃ?とわざとらしく受け取った華鶴葵。

「あら」

嬉しそうに笑った彼女は、いそいそと跡部の写真をポケットにしまい込んだ。

「調月 真珠。
 泉深女子短期大学 文化教養学科2年の19歳。
 京都の酒蔵 調月酒造の孫娘。
 ちなみに、息子は双子で、長男・龍壱の一人娘よ。
 テニス界隈だと、京都ではそれなりの強豪校に調月 青凪と言う選手がいて、そっちは双子の片割れの息子。彼女自身の名前は見つからないわ。
 夕菅の君との繋がりは、どうやら、お姉様のようね。
 彼のお姉様と同い年。
 白金鳳花の君の近くに現れ始めたのが、今年度になってすぐ。
 中等部時代は気配も見当たらないから、ここ数ヶ月の発展と見られるわね」
「相変わらず意地が悪いのね。
 知ってて、黙っていたの?」
「聞かれなかったもの」

ゆるゆると扇子を振る彼女に、情報元を聞くのは野暮なようだ、と、公爵の分家の末裔である彼女の情報を脳裏に留めた。

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